はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2019年5月20日 (月)

四百十三話 令和の人事②

 日本社会の人事の大きな枠組みが崩れるということは、われわれが当たり前と思っている、雇用や賃金の常識が変わってしまうことといえます。強固な枠組みの一角としての「定期採用」が「通年採用」になると、「職能給」から「職務給」へ、「就社」から「就職」、「総合職」から「専門職」へとドミノ倒しのように枠組みを構成する人事のアイテムが入れ替わっていくことでしょう。但し、「定期採用」から「通年採用」が浸透するのは、おそらく時間が掛かるはずです。「定期採用」にも大きなメリットがあり、労働組合も一定の比率を要求するでしょうから、最初の浸透はかなり遅いと思われます。これまでの人事の例からすると、ゆっくりとある程度までゆっくり進み、ある時点で一気に拡がるでしょう。
 いずれにしても、人事の枠組みが変わることは、中小企業にとっては逆風が増すことに他なりません。たとえば「通年採用」といっても、中小企業はもともと「通年採用」であり、その市場に大手が乱入してくるようなものだからです。他のアイテムもしかりです。これまでの人事の枠組みで日本の中小企業は反映したともいえるでしょう。とくにものづくり中小にとってはそうだったといえます。
 変化がわかっているのに対処しない手はありません。しかも、まだ時間があります。まずは、何が起こるかを理解し、変えるべきものと変えないものとを検討すべきです。

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2019年5月13日 (月)

四百十二話 新人の仕事

  関与先等の新人研修を行っていて思うことは、「新人のうちにしか教えられないことがあり、それは必ず新人のうちに教えておくべき」というものです。とくに新卒や新卒同等の新入社員に対してはそうです。
 新人のうちに教えておくべきことはいくつかあります。「社会人マナー」や「電話応対」」などもそうです。でも、意外にされていないのが、「自分の仕事の組み立て方」ではないかと思います。指示された仕事をもう一度、自分の視点で組み立て直してから取り掛かることですが、これを教えておくと、上司はずっと楽になります。たとえば、納期を曖昧に指示した仕事でも、「これは金曜日の午前中まででよろしいですか」などと新人の方から訊いてくれるようになります。また、新人自身も「指示された」という受け身の姿勢から、「自分ごと」に仕事を引き寄せることができます。それは、会社人にとって仕事を楽しくするコツともいえます。
 但し、「自分の仕事の組み立て方」は会社に慣れて仕事がわかってくると、教えにくいものです。素直な新人のうちに教えておきたいものです。

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2019年5月 7日 (火)

四百十一話 令和の人事①

 平成の経済はバブルのピークと崩壊ではじまり、日本の人事制度に成果主義を呼び込みました。その成果主義には二つの顔があり、一つは年功の排除・成果重視の顔、もう一つは人賃金から仕事賃金へという顔でした。この30年の間に一つ目の顔の年功の排除・成果重視は浸透しましたが、結局、日本社会は二つ目の顔の仕事賃金には移行しませんでした。世界標準は賃金が仕事にくっついた仕事賃金であり、グローバル化は吹き荒れましたが、日本独自の賃金が人にくっついた人賃金は変わらなかったわけです。その大きな理由としては、高度成長期に日本社会は独自の人事のしくみを強固なスクラムとしてつくりあげたからです。すなわち、人賃金、定昇、定期採用、年功型賃金カーブ、終身雇用、社内組合、社内ローテーション、定期異動、厳格な解雇法制、定期昇進、総合職正社員というスクラムであり、これらは個別の人事制度というより、一体となった日本型人事という一つシステムであり、セットの制度といえるものなのです。人賃金だけを職務給などの仕事賃金に置き換えることはできないわけです。仕事賃金に替えるには、セットの中身すべてを見直し、新たなセットをつくらないとなりません。
 平成の終わりに、経団連は大学と合意し、定期採用から通年採用に舵を切りはじめました。スクラムの一角が崩れ、これからセットの見直しがはじまるでしょう。令和は時間を掛けて新たな日本型人事制度をつくりあげる時代になりそうです。

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2019年4月22日 (月)

四百十話 大卒求人倍率

 2019年卒業予定の大卒求人倍率は、リクルートワークスの調査を見ると1.88倍で昨年より0.10ポイントの上昇です。厚労省調査の同就職率のデータでも98.0%と昨年比0.4ポイント増の過去最高で、まさに売り手市場真っ只中と言える状況です。
 けれども、この数字は平均値であって、もう少し細かく見ると現実はさらに凄まじいと言えそうです。規模別求人倍率では300人未満で9.91倍と昨年の6.45倍から3.46ポイントも上昇しています。それが、5000人以上の大企業では0.37倍と昨年より-0.02ポイントの低下です。つまり、売り手市場、人不足の超採用難は中小企業で、大企業は買い手市場といえます(300~999人規模で1.43倍、1000~4999人で1.04倍)。実はこの10年で見ても大企業はずっと買い手市場で、中小企業はずっと売り手市場、採用難なのです。ということは、規模でくくられてしまうと中小企業に勝ち目はないということでしょう。中小企業は違う切り口でウリ文句を考え、大手と違うアプローチをしないと、欲しい人材は永遠に来ないかもしれません。

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2019年4月15日 (月)

四百九話 労働者か自営業者か

 コンビニの店主らが本部に団体交渉を求め、会社側が認めなかったため、救済を中央労働委員会(厚労省の外局)に求めていましたが、中労委はコンビニ・オーナーは独立した事業者であって労働者ではないとし、棄却しました。
 これは、雇用関係にあたらないという事例ですが、タクシーのシェアリング・ビジネスで業績を拡張させたウーバーテクノロジーズが、各国で雇用問題の訴訟にあっています。ウーバーの運転手が自営業者か、雇用されている労働者かという問題ですが、英国では雇用という判決が下され、ウーバー側が控訴しています。カリフォルニアでも、競合のリフトという会社と共に労働者性を問われ、会社が負けています。これにより、ウーバー等のビジネスモデルは根幹から考え直さざるを得なくなるでしょう。すでに、22億円の和解金の支払いや上場を危ぶまれる事態になっています。
 それにしても、労働者か自営業者かの問題は難しい問いで解決されたわけではありません。大阪でも緑のバッグを背負って自転車に乗る、ウーバーイーツの運び屋さんを見掛けるようになりましたが、これも雇用となれば、このビジネスは成立しなくなるでしょう。新しい労働形態の出現にこれまでの枠組みは合っていないともいえます。いずれ、派遣労働者のように新しい法制の枠組みが出てくることでしょう。

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