はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2019年10月11日 (金)

四百三十話 入社後の転職

 日経によると、20代向け転職サービスの登録者のうち、卒業後3年以内の人数は前年対比で3割も増えているとのことです。登録者ですから、実際に転職するかどうかはわかりませんが、就活を再開していると見てよいでしょう。急速に若手人材の流動化が進みそうな気配です。
 中小企業にとって、人材の流動化は由々しき問題です。とくに若手はそうです。苦労して採用した新卒が3年程度で辞めてしまっては、採らなかったほうがマシと言いたくなるでしょう。
 大手はこれまで新卒中心でしたが、トヨタが中途採用を当面は3割に増やし、いずれ5割に持って行くと発表しました。他社も追随することでしょう。年功、終身雇用は崩壊し、流動化は思ったより早く進みそうです。
 中小企業は採用に時間、労力、コストを掛けるよりも、これからは定着にウェイトを置くほうが得策となりそうです。人事戦略を持たざるを得なくなりつつあります。
 

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2019年9月25日 (水)

四百二十九話 高卒新卒採用

 厚労省の発表では20年度の高卒求人倍率は2.52倍(7月末時点)で、大卒求人倍率1.83倍(リクルートワークス発表4月時点)より高く、高卒の採用難はより厳しそうです。新卒の初任給は、これまで大卒が伸びて、高卒は採用方法の違いもあって遅れ気味でしたが、ここへ来て高卒の求人熱が高まり、初任給の上昇率も逆転しはじめています。
 これまでは高卒に継続してエントリーし採用できていた中小企業は、あてにならない大卒と較べて比較的安定した労働市場だったと思われます。けれども、これから大きく変わっていきそうです。現在の高卒採用ルールは50年以上も変わっていない1人1社方式で、高卒者が企業を選択する余地が乏しい特異な採用方式と異議を唱えるところが増えて来たからです。高卒者自身にとっては、実際はそれほど問題がなかったと思いますが、この流れは止まらないでしょう。高卒採用も大卒と同じように自由化してしまうと、大手企業や名前の通った企業が有利になり、多くの中小企業にとっては厳しい状況になりそうです。採用の労力とコストは増々高まることになるでしょう。

🎤 今年の弊グループの親睦会は大阪国際がんセンターの松浦成昭総長に重粒Img_3899Img_3897子線によるがん治療をお話しいただきました。専門的にならず、とてもわかりやすい説明で好評でした。重粒子線治療というのは炭素原子を加速させ、直接がん細胞に照射するもので、巨大な加速施設が必要になり、日本で大都会の真ん中にあるのは大阪だけだそうです。近くにこのような施設があることにあらためて驚いた次第です

 

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2019年9月15日 (日)

四百二十八話 新卒の指導のステージ

   今年の新卒の新人が入社して、もうすぐ半年になります。多くの会社で、新人が携わる一通りの仕事を経験して、本人も仕事や会社がどういうものか、少し見えてきた頃でしょう。最初は無我夢中で取り組んでいた新人も仕事がわかってくると、「なんだ、こんなものか」と思う者も出てきます。その意味では、そろそろ指導のステージを一段、あげるべき頃と言えるのではないでしょうか。ただし、相手に応じてですが。
 新人の指導の原則は、「基本をしっかり教え込む」「良い手本のマネをさせる」のが最初のステージですが、次のステージでは「仕事の面白みを教える」のはどうでしょう。まだ、早いと言う意見もあるでしょうが、そうしないと、優秀な人材ほど辞めかねないのが昨今です。少し前倒しくらいが良さそうです。
 「仕事の面白みを教える」というのは、「少し困難な仕事を任され達成した」、あるいは「お客さんに褒められた」というような体験を与えることです。早い時期でのこのような経験はその人の会社生活の礎となったりするものです。
 せっかくの新卒ですから、指導係はなんとしてでも一人前にしないとなりません。指導係のプレッシャーも半端ではないでしょうが、「仕事の面白み」を与える方策を練りましょう。上手く行けば、「指導の醍醐味」として、指導係にも帰ってくる筈です。

  Photo_20190913114501 🎤 おかげさまで、拙著「人を使うのが上手な人のリーダーのワザ」(明日香出版社) が、また増刷となりました。2015年6月に発行してから、コンスタンスにロングランしています。やはり、人を動かすのに悩む上司は多いようです。
 

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2019年9月 6日 (金)

四百二十七話 副業の矛盾

 パーソル研究所の調査(5月)では、「副業を全面的に認める」「条件付きで認める」を合わせて副業を認める会社は50%、残り50%は「認めない」という結果で、認めない会社の7割は「今後も認めることはない」としています。また、最新のエン・ジャパンの社員調査では「副業を希望している」人への「希望する理由」としてダントツだったのが「収入を増やしたい」でした。
 副業は政府が推奨していて、就業規則も副業を認めるモデル見本を提示しています。多様な働き方の一環ということですが、現実には働き方改革で残業が減った分を副業で稼ぐというのが本当のところです。つまり、「働き過ぎ」と「副業の推奨」とは矛盾するわけです。
 また、現行の法制は副業の時間について、本業と副業の会社で通算することになっています。つまり、1日8時間超えれば、超えた方の会社で割増を付けないとなりません。会社は「知らなかった」は通らないことになっています。本人が副業をしていたと言って、未払い残業代を請求すれば、払わざるを得ないような、会社にとっては恐ろしい状態と言えます。厚労省で副業における時間管理の問題など検討会もされていますが、結論は出ていません。時間管理を会社ごとに分けるなどの法改正は、とうぜん労働サイドは過労の問題を盾に反対なのです。つまり、実態も知らず、何も整っていないところで、副業の推奨をはかったのはとんでもないとしか言いようがありません。
 政治家は素人ですから兎も角、厚労省はどうなっているのでしょう。大丈夫でしょうか。

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2019年8月26日 (月)

四百二十六話 派遣の同一労働同一賃金のインパクト

 20年4月より同一労働同一賃金の本格法制がスタートします。これは非正規社員を対象とした処遇の規制ですが、派遣社員も対象となり、かなり制約を受けることになりそうです。派遣社員を雇うには、その賃金を「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」かのどちらかで決めないとならなくなります。中小企業の多くはおそらく、自社の社員と同等の処遇にする、「派遣先均等・均衡方式」を選ぶと思われます。
 この規制自体は想定していたことでしたが、注目すべきは、もう一つの「労使協定方式」で、先ごろ発表されたその具体的内容によるところです。「労使協定方式」というのは、「同じ地域で働く、同種の職種の仕事に従事する正規労働者の平均的な賃金以上にせよ」というものですが、その具体的な賃金指標が7月8日に通達として発表されました。基礎となる指標は大きく二つあり、一つは「賃金構造基本統計調査」、もう一つが「職業安定業務統計」です。どちらも細かな職種別の賃金指標で、とくに「職業安定業務統計」には全国ハローワーク別の賃金水準の基づく、789職種別勤続年数別賃金と全国平均を100とした都道府県より細かな職安管轄別の地域指数が公表されています。
 これは日本で初めての一般職種別賃金の法制化であり、誰も想定していなかったに違いありません。厚労省は思わぬ隠し玉を出してきました。「労使協定方式」は民間の指標を使ってもよく、これからの運用次第では民間の機関による指標がどっと出てくる可能性があります。日本の賃金の職務給化は意外に早く進むかもしれません。

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