はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2019年6月24日 (月)

四百十八話 令和の人事③

  日本の人事の大きな流れは、雇用の流動化です。今のところ、進行のスピードはそれほど速くありませんが、確実に進んでいます。雇用の流動化とは転職が活発になることを指します。転職が活発になると、賃金は職務給化し、雇用はより契約化します。そこに人手不足による売り手市場が加われば、長期雇用を前提としてきた中小製造業等は大きな打撃を被るでしょう。仕事はあっても、人は採れず、定着しないことになります。雇用の流動化政策は意図はないにせよ、中小製造業を淘汰する政策といえます。
 製造業では「下積み」の時期がどうしても必要な会社が多いでしょう。雇用の流動化は「我慢」の許容度を低下させます。人材育成の考え方も改めなければならなくなり、新卒を採れば、最初から仕事の面白みを教えないとならなくなるでしょう。また、日本で中小製造業がこれほど発展したのは、「多能工化」も大きな要因の一つといえます。職能給や総合職の制度は「多能工化」に寄与しましたが、これから進む職務契約化は「多能工化」に馴染みません。したがって、「多能工化」を残し、活かすにはこれまでにない工夫が必要になるでしょう。令和で会社が生き残るには自社の「人事」のあり方を考えざる得なくなりました。

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2019年6月17日 (月)

四百十七話 昇格の浸透

 一般に役職の上がりを昇進、等級の上がりを昇格といいます。昇格は、職能等級制度では能力がワンステージ向上すること、職務等級制度ではワンランク上の仕事を担当することを指します。とうぜん、昇格に伴って職能給や職務給がアップします。いずれにしても、昇格への認識が浸透して等級制度が本来の機能を発揮します。
 中小企業においては、等級制度といえば職能等級制度が一般的ですが、昇格の浸透が進んでいない会社がまだまだ多いと思います。役職の上がりの昇進の認識が強くて、昇格がステイタスになっていません。また、昇格と昇進の区別がついていなかったりします。その意味では多くの中小企業の等級制度は中途半端ともいえます。
 昇格の認識が定着すると、プラス面がいろいろと出てきます。管理監督職のスキルアップや人材の定着につながったりします。では、どうやって昇格を意識させるかですが、方法は一つしかありません。それは、「どうすれば昇格できるか」を明確にすることです。会社としてそこに力を注げば、帰ってくるメリットは思いのほか大きいと言えます。

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2019年6月10日 (月)

四百十六話 ロボット派遣

 ロボット派遣という、SFに出てくる話のようなことが現実になり始めています。人材派遣大手のパソナがロボット派遣に参入するとか、ロボット派遣に500億投資したアルバイト求人サイトのディップの株価が急騰したとか、ロボットが人にかわって派遣される時代がすでに始まっている様相です。
 ロボット派遣というと、なんだかアトムに出てくるようなヒト型ロボットが集められて、会社に派遣されていくイメージを持ってしまいますが、現状でのロボット派遣とは「派遣」と名がつくものの、いわば機械のレンタルと同じです。これまで人がやっていた作業が機械に置き換わるというもので、呼び名のインパクトが先行している印象です。でも、AIの進化でその対象の仕事が急速に拡がりつつあります。複雑な判断が入る業務もルーティン業務であれば、すべてロボットに置き換わる可能性が大といえます。
 但し、どのような優れたロボットにも最初は仕事を教えないとなりません。よって、仕事をロボットに通訳したり、AIをどのように使うかなど、仕事とロボットをコーディネイトする人材がどうしても必要になります。パソナなどはロボット派遣といっても、ロボットを使えるようにする人の派遣にウェイトを置いているようで、新しい仕事の出現です。これから、働き方も仕事そのものも大きく変わっていきます。

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2019年6月 3日 (月)

四百十五話 考課者研修の段階

 5月と6月は考課者研修が夏季賞与に向けて多くなります。考課者研修は考課者を対象に実施しますが、おおむね3つくらいの段階があります。1)自社のルールを知る段階、2)ルール確認と目線合わせの模擬演習の段階、3)目線合わせの実践研修の段階です。これは、クルマ免許の教習と同様です。交通ルールや運転の基礎知識を座学し、教習場内を模擬運転し、実際の路上で実践研修するわけです。仮免や初心者マークのクルマはサポートや注意が必要なのも同じと言えます。クルマの免許でも順番があり、段階を踏んでいくように、考課者研修でもこの順番を間違えないことです。
 多くの会社で起こる人事考課の問題の一つに、考課者による甘辛があり、その原因に「他部署不審」があります。「他部署や他の者は、もっと良い点を点けているのでは。」というもので、自部署の点数をわざと高めにしてしまったりします。この問題などは、1)や2)の段階の研修では解決できません。3)の実践研修で実際の考課結果を使わないとなりません。でも、考課のルールの知識や考課の理屈がわかっていないと、部署間等の不審や対立を深めるだけになりかねません。自社の段階に合わせて研修することが大事といえます。

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2019年5月27日 (月)

四百十四話 クライアント・インサイト

 マーケティングの用語に「消費者インサイト」という言葉があります。消費者自身も気がついていないニーズ、あるいは自分では反対に思っていた購買動機などのことで、それにフィットした商品や自分はこうだったんだと気づかせるキャッチコピーなどを伝えると思わず買ってしまうというものです。人事コンサルティングにおいても、同様のことがよくあります。たとえば、社長さんから人事制度構築の相談があった場合に、「我が社もこれまでは個人商店型で業績を伸ばしてきたが、そろそろ頭打ちで、これからは組織で業績をつくる必要がでてきた。そこで、わたしが評価したい社員の要件を制度化しておきたい。」と、いうようなことから人事制度の整備を進めていくと、ある時点で経営のバトンタッチの問題にもつながったりするわけです。事業承継のことは社長さんの頭の中にあるのですが、人事制度とは関係ないと最初は考えていたのだと思います。でも、「人事制度づくりにご長男の専務にも入って貰ってはどうでしょう。」などと提案すると、重要性にピンッと気が付かれるわけです。そういう点では、人事というのは会社の課題を普段はあまり考えない角度から炙りだしたりするものです。

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