はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2022年5月 6日 (金)

四百八十六話 人材採用戦略

 中小企業の採用方針の一つ目の選択は、新卒メインか、中途採用メインか、或いは混成かを決めなければならないことです。これは、大手企業も同じですが、近年、大手企業も中途採用が増えてきたものの、実態はまだまだ新卒中心となっています。中小企業では様々な理由から、中途採用100%の会社は沢山あります。新卒、中途採用、どちらが自社の仕事、組織、経営方針に相応しい人材を獲得できるかを一度は考える必要があるでしょう。
 採用方針のもう一つの選択は、採用基準のバーをあげて高技能集団等をめざすか、あるいはそこそこの人材を上手くやり繰りして活用するかです。採用基準のバーをあげて人をセレクトするには、賃金の水準や企業の知名度、魅力度、仕事の魅力度がないと難しく、その要素に欠けると、はなから人が集まらないでしょう。よって、この選択をできる中小企業は非常に限られることになり、多くの中小企業は「そこそこの人材を上手くやり繰りする」しかないのが実際のところです。「そこそこの人材を上手くやり繰りする」ためには、教育とマネジメントが重要なのですが、どちらも苦手な会社が多いのも事実です。それでも多くの会社が上手くやって行けているのは、優秀な経営者がすべてを見ているからです。でも、この構造も危うくなる局面が訪れます。それは、一つが事業の継承のときであり、もう一つが人数が増えて、経営者が見渡せなくなるときといえます。

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2022年4月18日 (月)

四百八十五話 ベースアップ

 先月くらいから関与先等からの昇給の相談が増えています。その内容からすると、今年の昇給は統計機関の当初の予想値よりも少し上がるように感じます。中小企業においても業績の良いところは結構あり、ベースアップなど賃金表の書き換えの依頼が例年より多いといえます。
 理由の一つは、コロナ禍に目処がつき、世間の動向が経済に舵をきり始めたこと。二つには、物価の上昇で賃金も上がるだろうと先取りしたこと、三つには採用市場がコロナ禍前の人材不足に戻ったことがあげられます。とりわけ、新卒の採用は厳しいようで、初任給アップはベアに繋がります。
 中小企業においても、昇給を定昇とベアにわけて考える会社が増えました。但し、自動昇給による定昇は少なくなり、人事考課にもとづく査定定昇が殆どとなりました。
 コロナ禍とウクライナ侵攻の影響で企業は業績の差が大きくなりましたが、賃金もまた企業間の格差と評価による昇給格差で、大きくなりつつあります。

 

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2022年3月14日 (月)

四百八十四話 中小企業の人事のコツ⑮

 目標管理で目標を設定し、「やれやれ」と思っていると往々にして失敗をします。目標設定は大事ですが、目標管理の目的はあくまで目標達成することですから、設定してからが本番といえます。
 前回に、早い段階で目標の進捗確認をすることが大事と書きましたが、進捗確認の面接(レビュー)をすることで様々なことが見えてきます。進捗確認のの面接には、大きく四つの確認事項があります。
 一つは、目標が「どこまで進んでいるか」ですが、同時に目標を正しく理解しているか、現実と乖離していないかなど目標設定の妥当性を検証します。当初は机上の設定だったものが、実際に少し進めた後に確認することによって、双方ともによくわかるものです。
 二つには、「障害や問題は無いか」です。順調に進捗していて、障害や問題が無ければ、上司からの余計な干渉は不要でしょう。もし、障害や問題があれば、当然、取り除く必要がありますが、上司はそれが何かを本人に明確に理解してもらうことが大事になります。少しも進んでいない、予定通り進んでいないのも勿論、ここで扱う「問題」なわけですが、その本当の理由を正しく共有することが必要です。たいていは本人が「ルーチン業務が忙しくて、単に手をつけていないだけ」という場合が多いので、その場合は「いかに手をつけさせるか」を実行すれば良いことになります。でも、ここで「手をつけていない」理由が他にないかを探ることは重要です。さもないと、目標はずっと「手をつけられない」ままになりかねません。意外に「言えない理由」があったりするものです。
 三つには、「達成の見通し」です。本人がどう考えているかが大事ですし、見通しを共有することが必要です。同時に目標管理は目標をあくまで達成することが目的ということを再確認します。上司からすれば、「いかに達成させるか」を忘れてはいけません。
 最後は、目標に対する「次のアクション」です。上述の三つは飛ばしても、この確認だけを押さえておけば、目標は確実に前進する魔法の言葉といえます。目標を少しでも進める上では、結局のところ、次に「いつ」「なにをするか」がもっとも鍵となるわけです。

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2022年3月 4日 (金)

四百八十三話 採用試験

 以前は履歴書と面接くらいで採用決定していた会社も、「採用してみたら、とんでもなかった」という例が続いたりして、最近では中小企業においても採用試験をする会社が普通になってきました。面接は「わが社に相応しい人材」を選ぶのに重要な手続きですが、確認できないことも多くあります。したがって、試験等で補足する必要があります。
 たとえば、話すのは流暢で内容も的確という人が、文章を書かしたらでたらめで、何を説明しているのかさっぱりわからないというケースは普通にあります(勿論、その逆もあって、話すのはたどたどしいけれども、文章を書いたらきちっと書けて内容も的確というケースもよくあります)。また、履歴も問題なく、面接ではしっかりしていそうな人が、簡単な計算ができなかったり、文章の理解力がまるでない、単純な作業をさせたらミスが多い、異なる複数の仕事を処理できないなどもよくある例です。これらが教えているのは、話すことと書くこと、読むこと、計算すること、作業すること等とは別物だということです。われわれは姿勢も良く、的確な話をする人はすべてにおいてよくできる、或いは他のことでもある程度のレベルは持っていると思いがちですが、実際はそうでもない例が多いということです。
 かと言って、オールマイティな理想的な人を求め過ぎると、この人不足の状況において誰も採用できなくなりますから、自社に合った必要な人材をはかる自社に合った試験等を実施し、採用判定を補足する必要があると言えるでしょう。基本は、採用後に予定のメイン業務に絶対に必要な能力をおおよそでもはかれる試験と、メインではないがそれについてはわが社の社員として最低限必要というレベルをある程度はかれる試験を実施することとなります。
 一般的にいえば多くの業務は、ひとの話を素直に聞けて、きちんと理解し、数字の計算ができさえすれば、あとは採用後に教育することでなんとかなるともいえます。

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2022年2月 8日 (火)

四百八十二話 人を動かすコミュニケーションの基本スキル

 些細なことが原因で、多くの中小企業において生産性が悪くなっていたり、士気が低下していたりすることがよく見受けられます。その原因の多くは、いわゆるコミュニケーション不足によるものです。
 そのような会社や部署でコミュニケーション不足を指摘すると、大方の答えが「きちんと伝えている」「繰り返し説明している」などと返ってきます。コミュニケーションとは「相互理解」なのですが、問題のある会社や部署では往々にして「一方通行」だったりするわけです。つまり、上司等は「伝えたつもり」「説明したつもり」なのです。ほんとうに伝わったかどうかは、相手に確認するしかないのですが、そのひと手間が不足しているのです。それはマネジメントの基本スキルなのですが、それを身につけていない管理・監督職が多いのも事実でしょう。そのひと手間は誰にでも身につけられるものですから、はじめに教えておくべきです。
 相手にほんとうに伝わったかどうかの確認は、復唱さす、書かせる、相手に訊く、やらせるわけですが、いつまでも復唱というわけにも行きません。伝えたことをほんとうに理解しているかどうかを知るには、何を訊けば良いか、ポイントを掴んでいるのが有能な上司といえます。でも、これは習慣で身につけることができます。また、訊くよりもっと簡単な方法は、相手から報告させることです。「さっき言われていたのはこういうことですか」と少し手掛けたところで、方向に間違いがないかどうかを相手から確認に来させるようにすることです。このような指導・育成が、組織づくりのはじまりといえます。

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