はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2024年6月17日 (月)

第五百五話 中小企業の賃上げ②

 各統計機関の中小企業の賃上げが概ねで揃いました。東京都、商工会議所、大同生命、帝国データ、フォーバルGDXリサーチ研など、いずれも3%台と言って良いでしょう。大手企業の春闘の数字は5%台で、かなりの開きはありますが、原材料、仕入価格をまだ充分に転嫁できていない中小企業が多い中では、よく頑張っている数字のように思います。言い換えれば、採用難、既存社員の確保、モチベーションアップの観点から上げざるを得ない状況とも言えます。
 日経に掲載(5/22)の二人の大学教授による2023年度分の調査では、厚生年金のデータで見ると、大手企業の数字も全体では中小企業の賃上げよりも劣っているとのことです。全体というのは春闘の数字は組合平均であり、非組合員を含める全体を見るとかなり下がるというわけです。
 数字が下がる主な要因としては、①女性比率が高くなっているが、女性の賃上げ率が低い、②高齢者比率が上がっているが、賃上げ率がかなり低いことをあげています。わたしは加えて、非組合員の管理職が入っておらず、もともと賃金水準の高い管理職の賃上げが抑えられていることが大きいと思っています。
 いずれにしても、大手の春闘の数字を追いかけることはないといえそうです。それよりも、人が採れる賃金、生産性や付加価値アップの伴う賃上げに注力すべきでしょう。

✒ 先日、わたしどものグループの会で大阪国際がんセンターのご協力により、谷四にある大阪重粒子線センターの見学会を実施しました。設備の点検のために稼働を止める、年に3回のタイミングしかない貴重な体験となりました。重粒子線というのは、炭素粒子を光の70%という高速にし治癒部位にImg_6022 照射するもので、通常の放射線と違って、身体の深部にあるがん細胞も周囲の正常な細胞に与えるダメージを少なく、死滅させることができるとのことでした。重粒子線センターは全国に7箇所あるそうですが、都会のど真ん中にあるのは大阪だけとのことです。そのような好立地につくれたのは、円形の加速器が小型化できたからだそうですが、痛みもなく、働きながら治療に通えて、保険が効く治療なら1回10万円程度らしいですから、関西に居住していて良かったというしかないですね。



 

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2024年5月 2日 (木)

五百四話 上がらない賃金の終焉

 今年は昇給の相談が多く、昇給時期が遅めのところが多い中小企業にあっては、関与先でもまだ検討が続いています。
 大手企業は5%以上とかニュースにも流れたりしていますが、今年は原材料の値上がりをなかなか転嫁できない等もあって2極化が激しく、中小企業では3%以上あれば、高い方の会社となるでしょう。
 中小企業でも新卒採用が中心のところは大変です。23年度卒で前年比2%程度だったアップだった初任給は、24年度卒では3.8%程度上がりそうです。この初任給アップはベアと同じ意味を持ちます。ベア3.8%に定昇が加われば、大手の5%以上というのも、とんでもない数字ではないということになります(ただ、初任給をそこまで上げたのも大手と言うことになりますが)。
 中小でも新卒を採るのであれば、これについて行かざるを得ません。そうすると新卒に近い者は同様に上げて行かざるを得ず、ベアがかかります。ベアの平均を下げようとすると、もともと賃金水準の高い層を抑えることになります。そうすると賃金カーブは寝ることとなり、不満のもととなったり、昇進したくない者が増えたりします。
 これを避けるには、企業は二つの選択肢をせまられることになるでしょう。一つは定昇を維持するがよりメリハリをつけ、できる人により高い賃上げをする。もう一つはJOB型給与に移行し、定昇を抑え、仕事が変わらなければ給与は上がらない体系に変える。
 社会全体がJOB型あるいは日本式JOB型に移行しない限り、中小企業の選択肢は「一つ目」しかないように思います。「一つ目」を選択すると、「定昇」「昇格昇給」「評価制度」の三つのバランスが重要になるでしょう。
 いずれにせよ、中小企業の賃金のファンダメンタルズは変わり、「上がらない賃金の時代」の終わりのはじまりとなりました。

 

 

 

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2024年3月 5日 (火)

五百三話 中小企業の賃上げ①

 日本がデフレ停滞経済から脱却し、インフレ好循環経済に転換するには賃上げが鍵で、そのまた鍵が中小の賃上げという記事を目にします。
 その中小の賃上げの鍵は価格転嫁といえますが、大阪シティ信金の2月上旬の調査では、価格転嫁できている企業が64.8%と昨年より5.8ポイント上昇しています。これは経済産業省が出している企業全体の昨年からの価格転嫁の概況とも一致しています。
 大阪シティ信金の調査は大阪府下約1000社が対象でそのうち20名以下の少人数の企業が8割を占めているデータです。それを思えば、価格転嫁もジワリと浸透している感があります。
 業種別では製造業65.3、卸売業70.4、小売業61.4、サービス業69.3とまずまずの数字ですが、もっとも末端の運輸業が50.7と低いのがやはり気になります。ここが上がってくれば、中小の賃上げも勢いがつきそうですが、鍵となる内需がもう一つでモノの動きがまだ悪いようです。もう少し時間がかかりそうですが、4月から始まる労働時間規制の影響が最後の鍵となりそうです。

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2024年1月30日 (火)

第五百二話 仕事を深める

 中小企業にとって、これから重要になる施策はいかに仕事を「やりがいのあるもの」にするかでしょう。大手と差別化をはかり、人材の獲得と定着を高めるのに、賃金だけではどうしても限界があります。
 「やりがい」は「業績数値の追求」や「役職位を上げる」など人によってことなりますが、純粋に「仕事を深めたい」という人が増えたのは確かです。それは会社が求めるものとも合致するでしょうし、良い傾向ともいえそうです。
 では「仕事を深める」にはどうすれば良いかですが、会社の仕事内容によってかなり異なります。例えば、営業主体の卸売業などは、「仕事を深める」ことと「部署の責任者になる」「何人かを動かして組織目標を達成する」ことと、あまり乖離はありませんが、スキルとしては見えにくいといえます。製造業などだと「仕事を深めたい」が「人を使う仕事は苦手、避けたい」という人も多いでしょう。でも、スキルとしては見えやすく、ステップアップしやすいともいえます。
 これからは、「仕事を深める」ことについて、具体的にどうすることで、どのように伝えれば良いか、自社の仕事と照らし合わせてよく検討する必要がありそうです。また、その場合に目標管理の手法はおおいに役に立つと思われます。

✒弊著の出版社から書店フェアの写真が届きました。有隣堂ららぽーと豊洲店と住吉書房元住吉店で、自己啓発関連のビジネス書のフェアのようですが、Photo_20240130102702 Photo_20240130102701 こうして並ぶとなかなかインパクトがあります。わたしの本も良い場所に2冊並んでいて、有難いですね。

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2024年1月 5日 (金)

第五百一話 令和6年

 はじめに、元日に能登半島で発生しました地震で犠牲になられた方々にお悔やみ申し上げますと共に、被災された多くの皆様にこころよりお見舞い申し上げます。また、被災された方々の安全と一日でも早い復興を祈っております。
 今年の日本経済の目玉はやはり賃上げです。でも、その賃上げは二つあり、その一つは春闘で大手の数字です。もう一つは中小の賃上げです。
 大手の賃上げは7月くらいには結果がわかります。すでにイオンはパートの賃上げを7%と謳っています。それに対して中小は大手の春闘の後から始まり、年末くらいまで交渉やらが続きます。また、結果の数字もはっきりとしないところが多いです。よって、日銀も数字が明確に出なくとも大勢が判明すれば、方針転換を実施すると言っています。
 大手は好決算が予想されますが、値上げを転嫁できていない、人不足で売上機会を逃しているなど、中小はもう一つのところが多いです。インバウンド効果も恩恵を受けているのは大手だけで、中小にはまだまわって来ていないと言えます。
 したがって、今年のカギを握る中小の賃上げですが、人不足で初任給を上げざるを得ないというトリガーだけではもう限界に来ていると言えるでしょう。但し、明るい兆しはあります。昨年3月と9月に行われた経産省の価格転嫁調査結果は価格交渉が半年で大きく増加したものでした。間もなくその効果が出始めると思われます。

✒イラストは、おそらく穀物をサイロに荷揚げする貨物船と思われますが、この大きな船は地球の裏側から来たのかも知れません。夕焼けに染まImg_5807 り、船の灯りも燈りはじめています。もう暗くなる前の美しい僅かな一瞬ですが、地球も周っているし、経済も地球を周っているという壮大な感覚を感じさせてくれます。佳い一年になって欲しいものです。

 

 

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