はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2020年2月12日 (水)

四百三十九話 賃金水準データ

 中途採用比率の公表義務化、労災の時間合算、詳細な一般職種別賃金及び地域指数の公表、ハローワークの求人求職システムの構築、日本版O-NETという、国の矢継ぎ早な一連の動きは雇用の流動化を加速させることでしょう。それほど表立っていないものばかりで、さほど影響がないように見えますが、でも意外に侮れないかも知れません。例えば、次のようなことが簡単にできるようになり、雇用を取り巻く環境が変わりそうです。
 医療介護事務に就いていた女性が忙しい割には給与が低い気がして、O-NETから一般職種別賃金で調べると時給換算平均950円で、自分のところはそれほど悪くないと安心したものの、勤めている滋賀長浜からすると大阪西の指数は15ポイントも高い。換算すると1040円にもなる。でも、同じデータ入力中心の業務なら、一般のデータ入力の方が平均でも1026円もなる。大阪西の指数を使うと1180円だ。さらに営業事務なら平均で1117円とさらに高く、大阪西の指数で1285円にもなる。など、「少し考えてみようかな」と転職が頭をよぎる。
 現在、日本には非正規を除いて正社員の賃金水準の指標がほとんどありません。わずかに大都市のみがモデル賃金を出しているくらいですが、モデルという考え方も間尺に合わなくなって来ています。そろそろ、この不自然な状態を修正せざるを得ないでしょう。そうすると、次に来るのは地域別、規模別、仕事別の賃金水準しかありません。中小企業にとっては厄介な風が吹きはじめます。

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2020年2月 4日 (火)

四百三十八話 日本版O-NET

  4月1日より同一労働同一賃金が中小企業にも適用となります。それと合わせて、日本版O-NETもスタートする予定です。日本版O-NETとは米国のO-NETにならって国が主導してつくった、職業情報をメインとする検索システムです。自分に適した職業にはどのようなものがあり、それはどのようなレベルで、どんなスキルを身につければ良いか、それにはどうすれば良いか等を検索できるわけです。ハローワークの求人情報ともリンクするようになるでしょう。
 日本は他国と違い、就職ではなく就社といわれるように、職業意識が希薄な社会です(そのような社会に適合した制度が、職能給であり、新卒一括採用であり、総合職等なわけです)。よって、一般には米国のような仕事の単位となる「JOB」の認識はありませんし、職業分類にも慣れていません。国はO-NETでまずは職業分類に抵抗をなくそうという狙いがありそうです。
 経団連のジョブ型採用の推進発言、同一労働同一賃金のスタート、労使協定方式の職業別賃金基準値の公表、ハローワークの求人求職システムのネット化、日本版O-NETのスタートと、官が主導する職務給化への土壌は整いつつあります。さて、これまでの日本の堅牢な雇用システムは結局、崩れないのか、あるいはある時点で一気に職務給社会に突入となるのか、それとも両方の良いとこどりをした新しい仕組みが根付くのか、今、日本社会は難しい選択を迫られています。

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2020年1月27日 (月)

四百三十七話 中途採用比率

 来年4月より、301人以上企業の正社員に占める中途採用比率の公表が義務付けられます。政府はとくに新卒一括採用比率の高い大企業をターゲットに、就職希望者が中途採用に前向きな企業を把握できるようにしたいと言っています。もちろん、新卒一括採用一辺倒から中途採用の割合を高め、硬直した日本の雇用制度を崩すのが狙いと思われます。
 大手の中途採用比率はこの10年で伸びています。例えば自動車メーカーで見ると、2009年で6%程度だったのが2016年には29%に上がっています。直近17年のリクルートワークスのデータでは産業全体で、5000人以上企業で37.4%です。但し、2016年も37.8%とかわらず、頭打ちの状態なのです。そこで、今回の公表義務化となったのでしょう。
 ちなみに、同調査17年の5~299人規模の中途採用比率は76.7%です。中小企業は中途採用頼みなのです。大手が中途採用にさらに手を広げ始めると賃金相場も上がり、中小の人材採用はさらに厳しくなります。頭の痛い限りです。

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2020年1月20日 (月)

四百三十六話 ジョブ型社員

 経団連の中西会長が「日本も、もう少し、ジョブ型社員を増やすべきだ。」というような発言をしています。確かに、「ジョブ型社員」はこれから当面の間、雇用、人事制度のキーワードとなるでしょう。
 「ジョブ型社員」とは、限定された職務をこなす、専門職、契約色の強い正社員のイメージで、そもそも日本以外は「ジョブ型社員」が中心です。それに対して、日本の雇用形態の中心は「総合職社員」です。大手はグローバルな社員の取り込み、優秀な専門技術職社員の採用・定着にこれまでの「総合職社員」では限界を感じています。よって、冒頭の経団連会長の発言となったわけです。
 では、「ジョブ型社員」を増やせばよいというわけですが、現在の「総合職社員」中心の雇用システムは、一括型定期採用、定期昇給、終身雇用などとセットなのです。つまり、「ジョブ型社員」を増やすということは、このような人事慣行が崩れることを意味します。そのような変化に大手は兎も角、中小企業はどう対応すべきかです。
 欧米の「ジョブ型社員」中心の企業とは、いわば全員が契約社員のようなものですが、中小企業はそのようなことができるでしょうか。適している職種もあるでしょうが、大半は難しいと言わざるを得ないでしょう。日本の発明品「総合職社員」は中小企業にとってはとても有り難い、理に適ったシステムといえます。容易に手放す手はないように思うのですが。

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2020年1月11日 (土)

四百三十五話 賃金請求権の時効

  この4月の民法改正で時効が一律に5年になるのを受けて、厚労省の労政審で議論されていた賃金の請求権の時効が、現行の2年から当面は3年で固まりました。労働側の民法に合わせて5年にすべき主張に、経営側が管理負担などが重過ぎる等の主張で折り合っていませんでしたが、間を取ったかたちで決着しました。5年後に時効5年を再検討とのことです。
 中小企業にとっては、3年間の過去資料の管理はかなりの負担増です。また、未払い賃金の3年遡り支給も、実際にはまだまだグレーな運用が多い中で要注意です。なにか出てくれば、会社の存続にかかわりかねません。
 ただし、有給休暇の現行2年遡りの権利は、延ばすと権利の執行が逆に遅れかねないとの理由から、そのままとなりました。5日の義務化で苦労しているところに、これ以上休みが増えたら、中小企業はやっていけない会社が続出となったでしょう。こちらは常識的におさまりました。

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