はじめに

 私どものコンサルティングは賃金・人事に特化した、どちらかと言えば少々タイトなコンサルです。もう20年も続けていますが、私がこの仕事に関わり始めた頃と今では状況も随分と変わり、新たに出くわす問題(ご相談)もまだまだ増える一方です。
それらがコンサルティング・マインド、いわば私の好奇心を煽り立て、「惰性でコンサルは出来ない」と囁きます。
 そのような、ちょっと特殊であまり知られていない人事コンサルという仕事に携わり、東西奔走する私の思いつくままを連載いたします。

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2020年3月27日 (金)

四百十二話 採用と定着~その1

昨年の新卒者の入社後の大規模な追跡調査を全国求人情報協会というところが行っています。その集計結果を見ると、採用と定着について非常に重要な示唆が読み取れます。
 一つ目の示唆は「入社時に転職意向であった人は、入社後に就業意向に変わることはない」というものです。これだと、転職意向の人を採用してしまうと全員ではないにしても、大方は「仕事を教えても仕方ない」ことになります。その点では、採用時に見極めて選ぶことが大切になります。それがなかなか難しいわけですが、逆に言えば、他の要件はさておいても、「転職意向の見極めだけしておけば、なんとかなる」ということかも知れません。その方法のヒントが、次の二つ目の示唆に見て取れます。
 二つ目は、「入社時に就業意向であった人は、就職活動を通じて、自己理解や企業理解に力を入れていた」というものです。つまり、就業意向の人は「自分はどのような仕事に就いてみたいのか、どのような仕事に向いているのか」や「この会社は自分のやりたい仕事ができる会社か、どのような特徴があって、何が得意なのか」などを探り、理解しようと努力しているわけです。ということは、実際に「仕事が向いているかどうか」より、「そのような姿勢のある人を採用すべき」ということになります。したがって、面接時にそのたぐいの質問をすることや話を引き出すことが有効になりそうです。一度の面接では難しいにしても、二度、三度機会を作れば、かなり選別できる可能性はあるでしょう。

 

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2020年3月11日 (水)

四百四十一話 今年の入社式

 中小企業においても、 新卒を採用している会社はほとんどが、4月初めに入社式を行っています。今年は新型コロナの影響で、大手などでは中止を決めたところが報道されていますが、わたしどもの関与先では概ね予定通り行うとしています。それほど人数が集まるわけではないので、支障ないだろうというわけです。ただ、できるだけリスクを回避する観点から、東京や地方の営業所の新人は関西の本社に呼ばずに、テレビ会議で参加という会社はちらほら出てきています。
 新人研修も、同じく関与先では今のところ、とくに変更はないようです。各社、折角、苦労して採用した人材ですから、教育・育成には手を抜きたくないのです。それよりも、予定通り来てくれるか、体調を崩して来れなくなるようなことはないかを心配しています。
 それにしても、今年の新人はスタートから大変な洗礼を受けることになりました。でも、今年、これから就活に入る学生よりもある意味、良かったと思っていることでしょう。長く勤めてくれそうな気がします。

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2020年2月26日 (水)

四百四十話 緩む売り手市場

 今年の賃上げ予測は、主要シンクタンクの平均が昨年よりやや下回るも2%程度となっています。けれども、この新型肺炎の影響でこれからもう少し下がると予想されます。一番の懸念事項は終息の先行きがまだ見えず、景気がどこまで落ち込むのか読めない点でしょう。
 数字にはまだ表れていませんが、実態的には採用への影響も少し出はじめているようです。業績の見通しが立たないと、まず「採用」の手が止まり、取り敢えず「保留」となります。大手は状況の変化に対して動きが早いですし、採用の人数も多いですから、これから売り手市場一色だったマーケットは次第に緩むことでしょう。
 中小企業は、人材の獲得が幾分やりやすくなりそうです。それでも、中小のマーケットにおいては買い手市場となることは考えにくいですから、採りやすいときに良い人材を採っておくのが人材戦略の一つといえます。中小の採用においては大手と反対の動きをするのが鉄則です。
   

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2020年2月12日 (水)

四百三十九話 賃金水準データ

 中途採用比率の公表義務化、労災の時間合算、詳細な一般職種別賃金及び地域指数の公表、ハローワークの求人求職システムの構築、日本版O-NETという、国の矢継ぎ早な一連の動きは雇用の流動化を加速させることでしょう。それほど表立っていないものばかりで、さほど影響がないように見えますが、でも意外に侮れないかも知れません。例えば、次のようなことが簡単にできるようになり、雇用を取り巻く環境が変わりそうです。
 医療介護事務に就いていた女性が忙しい割には給与が低い気がして、O-NETから一般職種別賃金で調べると時給換算平均950円で、自分のところはそれほど悪くないと安心したものの、勤めている滋賀長浜からすると大阪西の指数は15ポイントも高い。換算すると1040円にもなる。でも、同じデータ入力中心の業務なら、一般のデータ入力の方が平均でも1026円もなる。大阪西の指数を使うと1180円だ。さらに営業事務なら平均で1117円とさらに高く、大阪西の指数で1285円にもなる。など、「少し考えてみようかな」と転職が頭をよぎる。
 現在、日本には非正規を除いて正社員の賃金水準の指標がほとんどありません。わずかに大都市のみがモデル賃金を出しているくらいですが、モデルという考え方も間尺に合わなくなって来ています。そろそろ、この不自然な状態を修正せざるを得ないでしょう。そうすると、次に来るのは地域別、規模別、仕事別の賃金水準しかありません。中小企業にとっては厄介な風が吹きはじめます。

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2020年2月 4日 (火)

四百三十八話 日本版O-NET

  4月1日より同一労働同一賃金が中小企業にも適用となります。それと合わせて、日本版O-NETもスタートする予定です。日本版O-NETとは米国のO-NETにならって国が主導してつくった、職業情報をメインとする検索システムです。自分に適した職業にはどのようなものがあり、それはどのようなレベルで、どんなスキルを身につければ良いか、それにはどうすれば良いか等を検索できるわけです。ハローワークの求人情報ともリンクするようになるでしょう。
 日本は他国と違い、就職ではなく就社といわれるように、職業意識が希薄な社会です(そのような社会に適合した制度が、職能給であり、新卒一括採用であり、総合職等なわけです)。よって、一般には米国のような仕事の単位となる「JOB」の認識はありませんし、職業分類にも慣れていません。国はO-NETでまずは職業分類に抵抗をなくそうという狙いがありそうです。
 経団連のジョブ型採用の推進発言、同一労働同一賃金のスタート、労使協定方式の職業別賃金基準値の公表、ハローワークの求人求職システムのネット化、日本版O-NETのスタートと、官が主導する職務給化への土壌は整いつつあります。さて、これまでの日本の堅牢な雇用システムは結局、崩れないのか、あるいはある時点で一気に職務給社会に突入となるのか、それとも両方の良いとこどりをした新しい仕組みが根付くのか、今、日本社会は難しい選択を迫られています。

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