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2008年6月 2日 (月)

四話 「学歴格差」

 5月28日の日経に筑波大の吉田あつし教授が近年の私立中進学熱の高まりに関して、ゆとり教育がもたらした公立不信等の他に、学歴による賃金格差拡大をその要因の一つに挙げています。
 確かに現在の世間相場、高卒初任給16万円と大卒初任給20万円の格差4万円は能力主義、実力主義、成果主義のどれから見ても大き過ぎると言え、実際に賃金設計においては、高卒給与を4年で大卒に追いつかせるには昇給のリスクが有り過ぎ、学歴格差、つまり学歴主義がどうしても30歳くらいまでは残ってしまいます。
 この不公平感を肌で感じて来た親の世代が私立中進学熱に遡ると吉田教授は分析していて、格差の固定化、階層固定化へつながると警告しています。

 外資系、特に欧州系の賃金制度に携わると分かるのですが、欧州の多くは程度差はあれ、労働が階層化されていて、単純労働で入社したものは管理職にまず上がれません。外資系経営者もその点では、誰でも管理職に上がれる日本の方が良いシステムだと言っています。
 但し、日本のシステムは良い意味でのエリート意識を希薄にしたのも事実でしょう。JFA専務理事の田嶋幸三さんも「言語技術が日本のサッカーを変える」(光文社)の中でなかなか世界に通用しない日本サッカーの体質の一因をそう指摘しています。

 格差の固定化、階層化は避けるべきですが、能力主義、実力主義による格差は必要ですし、同時に良い意味でのエリート意識の醸成はこれから必要と思われます。
 社会を階層化せず、しかもエリートを醸成する、この相反する課題を日本システムは迫られていると言えるでしょう。多分、答えは企業のこれからの賃金・人事制度にかかっている筈です。
 人事コンサルという仕事をしていると、少人数の会社の人事制度も必ず社会システムと繋がっているんだということをいつも再確認させられます。

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