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2008年6月 6日 (金)

五話「知人の名文から」

 わかりやすく、気負わず、簡潔で無駄なく、それでいて深く心に残る。そのような文章を書きたいと思っていますし、そのような名文に出会えれば何ものにも替えがたい至福の時間をもたらしてくれるものです。
 朝日新聞の「声」欄に載った、「娘が国際結婚、初のドイツ旅行」(2月5日)と「かしわもちに浮かぶ母と師」(5月2日)は短いコラムですが、まさしくそのような名文でした。
 寄稿者は私の恩人で元銀行マンの勝山直人氏です。
 わずか450字程度の文字数の中に何気ない情景と筆者の気持ちが無理なく淡々と描かれているにも拘らず、読む者に新緑の野山を歩いたようなすがすがしい感情を与えてくれるエッセイとなっています。
 一つは娘さんの国際結婚で初めてドイツを訪れた話、もう一つは作者の故郷、長野の田舎の話。この二つのコラムを読んでいるとまったく別のことが書かれているけれども何故か繋がっている感覚を覚えます。
 二つの情景は筆者の眼を通して同質のやさしい風景となっています。それは筆者がドイツと言う異国の初めての地においても「気負い」や「構え」がなく、子供たちのマナーに感心し、改札もない駅に素直に驚きを表しているからでしょう。人の温かさというのはフィルターを通さなければ、ドイツを長野の田舎も同じものだと言うことを伝えています。
 それにしてもグローバルな世界はわれわれの身近に、日常生活にもうすでに深く入っているのだとあらためて認識させられます。
このコラムを読まれたい方はご一報ください。

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