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2009年3月

2009年3月29日 (日)

三十五話 年度末のコンサル

 このような景況にもかかわらず3月は例年通り、昇給の説明会や考課者研修などで少々忙しい月となりました。弊社の本「はじめての賃金管理100問100答」「はじめての人事考課100問100答」からのご質問等も普段よりは多く頂戴しました。
 やはり、昇給をどうするか、昇給をしない、賃下げも止むを得ないにしても、その根拠など重要ですし、悩ましいものです。中小企業においても、「今年は昇給凍結だから人事考課もしない」というようなことはなくなり、評価は大切という意識は定着したように思います。
 多分、それは何よりも「いずれ景気も回復の波が来る、その時は大きなチャンスとなり、けっして逃さない」という気持ちがあるのだと思います。

 景気の予測はできませんし、業種等によっても随分と影響の大小はあるようですが、経営者の方からは「4,5,6月は不透明、より悪くなる要素も多い。」で、「でも、8月げらいからは上向くのではないか。」と言うようなところが現時点では大勢になって来たように思います。多くの大手の今春闘における「定昇凍結」も「凍結」なら「解凍」があるわけですが、「8月ぐらいから」という声も聞かれます。
 でもまあ、何が起こるか分からない不確定要素は多々ありそうですが、確かに少し前向きな話題も増え、明るい日差しがやや差し込み始めたところでしょうか。

 3月は出張も多かったお陰で読書も進みました。
 その中で同世代の作家の村上龍氏の最新刊「無趣味のすすめ」(幻冬舎刊)の次の一説は示唆に富むものでした。『だから趣味の世界には、自分を脅かすものがない代わりに、人生を揺るがすような出会いも発見もない。心を震わせ、精神をエクスパンドするような、失望も歓喜も興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った作業の中にあり、常に失望や絶望と隣り合わせに存在している。つまりそれらはわたしたちの「仕事」の中にしかない。』
 この不況を契機にこれから仕事に対する社会的なコンセンサスが大きく変わるように思います。その芽はすでに個々の会社の中にあるように思います。

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2009年3月22日 (日)

三十四話 定昇の意味合い

  今春闘でも定昇凍結、定昇割れのところが出て来ています。
 定昇は生活保障の意味合いとともに昨年よりいくらかでも熟練度や知識が向上し、仕事のレベルが上がることを根拠のひとつにしています。年功制のもとでは、勤続年数や年齢がその代替指標でした。能力主義以降はよくやる人とそうでない人とで同じなのはやはりおかしいという観点から、定昇にも上がり方に差をつけています。
 いずれにせよ定昇の意義はあります。確かに新卒入社の者と1年先輩では歴然と仕事のレベル差があり、同じなのはおかしいと感じますし、仕事ができる人ほどやる気を失うでしょう。
 特に新規雇用が新卒主体のわが国の大手企業では定昇制に至ったのも自然と思われます。逆に職種意識が強く個別化し、雇用が流動化している欧米では定昇の意識がうすいのも当然とも言えます。最初から人材が凸凹です。
 その意味では中途採用が中心の中小企業に定昇の考えが希薄なのもうなずけます。また、サービス業や流通業、比較的流動化が進んでいる専門職種などでは既に意味合いは薄いといえます。
 いずれにせよ今後、定昇が残るとしても全ての業種でより圧縮、意味合いは賃金体系維持分などと限定され、賃金の水準をつくる役割は定昇意外の等級やグレード、役職の上がったときの昇給に移って行くことでしょう。それでも、定昇を残せる会社は競争力のある会社、人材育成にウェイトを置く会社として一定の評価を得ると思われ、また人材の管理を楽にすると考えられます。

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2009年3月12日 (木)

三十三話 定昇

 「賃金改善 電機大手ゼロ回答 定昇維持が焦点」、このような記事が新聞紙面を賑わしています。電機各社の労組で構成する電機連合は昨年2000円の要求に対して、今年は大幅アップの4500円を要求していましたが、経営側は「景況は急速に悪化している。賃上げには到底応じられる状況にない、定昇の実施も議論の対象とする。」などの類のコメントをしています。春闘をリードし影響力の大きいトヨタも労組はベア4000円要求でしたが、経営側の回答は、「ベアはなし、但し実質的な賃下げとなる定昇カットには踏み込まず、賃金制度維持分(組合員平均7100円)は実施」としており、ほぼ妥結の見通しがつきそうな気配です。

 今年は労組の要求とはかけ離れて、現実は「定昇実施できるか」の攻防です。実際に現場では休業など仕事がない状況なのに、大幅なベア(賃金改善)は非現実的というのが、一般組合員の正直な感想のような気もします。おそらく、これから定昇割れのところも沢山出てくることでしょう。

 大手はこのような状況で、今年の攻防ラインの「定昇」とは会社が制度として約束した組合員原則全員を対象とする昇給のルールのことを指し、実施されれば、モデル理論値では想定の賃金カーブが維持され、想定の生涯賃金(モデル)が保たれることとなります。但し、現在はほとんどの企業がすでに年功制ではありませんから、各社の定昇の水準金額も理論値や平均のことで、実際には人事考課等による個別の格差が生じます。よって発表されている定昇金額も会社によっては、査定後に変わったりします。つまり評価が上に振れればかさ上げされ、下に振れれば目減りします。おそらく今年は大きく目減りすると考えられます。

 このように大手の賃上げとはベア(賃金改善)を指しますが、多くの中小企業の賃上げとは昇給そのものです。したがって、「賃上げ見送り」となると、イコール昇給凍結ということです。中小企業では今年は確実に昇給凍結が増えるでしょう。でも従来と違い、昇給の人事考課は平年通り実施するところも確実に増えました。昇給ゼロ、ベースダウンでも評価は必要ということで、人事考課の役目も賃金決定だけではないと考える会社が増えています。   

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