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2009年3月12日 (木)

三十三話 定昇

 「賃金改善 電機大手ゼロ回答 定昇維持が焦点」、このような記事が新聞紙面を賑わしています。電機各社の労組で構成する電機連合は昨年2000円の要求に対して、今年は大幅アップの4500円を要求していましたが、経営側は「景況は急速に悪化している。賃上げには到底応じられる状況にない、定昇の実施も議論の対象とする。」などの類のコメントをしています。春闘をリードし影響力の大きいトヨタも労組はベア4000円要求でしたが、経営側の回答は、「ベアはなし、但し実質的な賃下げとなる定昇カットには踏み込まず、賃金制度維持分(組合員平均7100円)は実施」としており、ほぼ妥結の見通しがつきそうな気配です。

 今年は労組の要求とはかけ離れて、現実は「定昇実施できるか」の攻防です。実際に現場では休業など仕事がない状況なのに、大幅なベア(賃金改善)は非現実的というのが、一般組合員の正直な感想のような気もします。おそらく、これから定昇割れのところも沢山出てくることでしょう。

 大手はこのような状況で、今年の攻防ラインの「定昇」とは会社が制度として約束した組合員原則全員を対象とする昇給のルールのことを指し、実施されれば、モデル理論値では想定の賃金カーブが維持され、想定の生涯賃金(モデル)が保たれることとなります。但し、現在はほとんどの企業がすでに年功制ではありませんから、各社の定昇の水準金額も理論値や平均のことで、実際には人事考課等による個別の格差が生じます。よって発表されている定昇金額も会社によっては、査定後に変わったりします。つまり評価が上に振れればかさ上げされ、下に振れれば目減りします。おそらく今年は大きく目減りすると考えられます。

 このように大手の賃上げとはベア(賃金改善)を指しますが、多くの中小企業の賃上げとは昇給そのものです。したがって、「賃上げ見送り」となると、イコール昇給凍結ということです。中小企業では今年は確実に昇給凍結が増えるでしょう。でも従来と違い、昇給の人事考課は平年通り実施するところも確実に増えました。昇給ゼロ、ベースダウンでも評価は必要ということで、人事考課の役目も賃金決定だけではないと考える会社が増えています。   

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