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2009年9月

2009年9月27日 (日)

五十九話 内需拡大

昨日のピッツバーグでの鳩山首相の記者会見でも内需を拡大する経済政策に舵を大きく切り替えると語っていましたが、では具体的にどうするのかがよくわからない。子ども手当、ガソリン税などの暫定税率撤廃、高速道路の無料化で消費を刺激するということですが、まず入るものが入らなければ、消費の刺激は一時的なものにしかならず続きません。
 民間給与は昨年比1.7%減の過去最大の落ち込みです。賞与など給与が増えなければ、モノが溢れる日本では、給付金を含む収入は消費にまわらず、貯金されてしまいます。そして何よりも失業率を下げ、雇用を増やさないと不安は解消されず、消費につながらないでしょう。
 過去最悪の7月の失業率は5.7%、失業者360万人、それに雇用調整助成金の対象者238万人を潜在失業者として入れると失業率は9%近くになるといわれるこの状況を何とかしないと当然、消費どころでは無いに違いありません。資源の無い日本で雇用を増やすには、金融立国、観光立国でしょうか。そのように産業構造を変えるのも一つでしょう。
 でも雇用をもっとも生み、即効性のあるのはやはり製造業です。例えば海外へ出て行った日本の工場を国内に戻せば、直ぐに数百万人の雇用は増やせるでしょう。その上、大手の工場が戻れば周辺の中小企業にも仕事が増え、雇用が増えます。どの企業も好きで海外へ工場を進出させているわけではありません。インフラや労働の質などを考えれば、国内に戻りたい企業は多いはずです。
 しかし、新政権が用意している諸策はどう考えても、それに逆行するとしか思えないものばかりです。企業は雇用を守るのが、長い目で見て自社の存続、発展に欠かせないと原則考えています。簡単には正社員を解雇しませんが、もし景気が回復し新たな雇用が必要になっても、競争力を保てないような雇用を決してしようとはしません。新たな雇用は海外へ行ってしまいます。
 賃金、派遣などの雇用のあり方、為替、相手国との産業協定などの総合的な政策を国内で雇用を生む方向へ向けないとなりません。たぶんこれから具体策が出て来るのでしょう。新政権に期待したいと思います。

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2009年9月22日 (火)

五十八話 次世代勉強会のレクチュア

 18日に某協会の次世代経営者の勉強会で講師をいたしました。構成は①20年になるわたしの人事コンサルを通じて、中小企業における人事のポイント②最近のわたしの新刊「一人前社員の新ルール」をテキストに「会社がホンネで評価したい社員」について③最近の賃金の動向とこれから④受講者からの質問Q&A、 等々で、プロジェクターでの資料を交え、4時間の勉強会となりました。若手の後継者の方々が中心ですから、普段はどちらかと言えば、賃金・人事はあまり頭には無いと思われますが、長丁場にかかわらず皆さん大変熱心に参加されていました。

 いつも人事のセミナーで悩むのは、聴講者の知識のレベルです。知っている人はよく知っているが、知らない人は皆目知らない。何の講演でも同じでしょうが、人事は特にその差が大きいように思えます。そもそも用語からややこしい。普段使っている言葉が人によって使われ方が違い、意味がかわったりします。例えば「賃金」。賃金と給与は同じなのか、賞与は含むのか含まないのか、等。ですから、勉強会などでは言葉の定義から入らないと、正確に話が伝わりません。

 人事の課題は業種によって特徴があります。今回の勉強会で、事前に頂いていた質問で多かったのは管理職と非管理職との差、残業手当の問題でした。つまり非管理職クラスで残業の多い者は管理職の給与を追い越すというものです。どこの会社でも多かれ少なかれ抱えている課題ですが、業態によっては極端、切実であったりします。悩ましい問題ですが決めてはありませんし、ある会社でうまくクリアした手法が自社に通用するとは限りません。また、特に中小企業では現実にはグレーな運用をされているところが多い部分でしょう。 でも、どちらかと言えば小手先で解決できる問題ではないといえます。賃金水準、身分制度、残業のあり方等、広い範囲にわたる人事のしくみの問題として捉えるべきです。ついでに言えば、ちょっと呑気な言い方ですが「人事はバランス」を知るテーマとしては格好の材料ではあります。

 人事はしくみ(制度)をつくっても、1+1=2のように行かない。今回の勉強会では若手後継者の方に「人事はバランス」を多少とも理解して貰えれば、わたしのレクチュアもすこしはお役に立てたかなと思っています。

 参考:「人事はバランス」についての内容が「一人前社員の新ルール」<ルール98>に掲載されています。

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2009年9月14日 (月)

五十七話 「伸びる通販と広告戦略」セミナー

 昨日、弊グループの関係先の懇親会で大手広告代理店ADKダイアログのCMO伊藤博永氏に講演を頂きました。テーマは「伸びる通販と広告戦略」~顧客を惹きつける通販の手法と広告作法~でしたが、100名を越す満員御礼となりました。この低迷する景況、不透明な先行きの中、やはり皆さん販売チャンネルや販売手法に感心が高く、なんとか打開、攻める方法を模索されていることが窺えました。
 中小・中堅企業が大手広告代理店を使える予算はなかなか無いでしょうが、講演は「なぜこの不況の中でも通販が伸びているか」の答に目から鱗の連続でした。なかでも通常の店Photo頭販売と通販広告の違いをTVCMを映しての解説は圧巻でした。「記憶させる広告」と「記憶はいらない、行動させる広告」の差が一目瞭然でした。このことは中小・中堅企業が世界中にアピールできる唯一の広告であり、すでに何らかで活用されているWEB(インターネット)広告、つまりホームページの作成についても、たいへん多くのヒントがありました。

 はからずも講演会の数日前に村上龍氏が経営者をインタビュするTV番組「カンブリヤ宮殿」で通販の雄、再春館製薬の西川会長が出演されていましたが、講師の伊藤氏はドモホルンリンクル立ち上げから8年間広告を担当され、今日の業績に関わった経歴の方です。TVでも村上氏が最後に「西川会長は随分と優しそうにみえましたが、本当は怒ったらこわいんでしょうねえ。九州の女将ですから。」というようなことを何度も繰り返していましたが、伊藤氏も「本当にもの凄く怖いです。」と言われてました。
 そのときの『机を叩かれて怒鳴られた』というエピソードはまた別の機会に。それにしても、充実した講演会となりました。

出席いただいた明日香出版社の石野相談役さまのブログにも紹介されています
 参考図書「買わせる通販ビジネス」(日本文芸社) アサツーディケイダイレクトコミュニケーション本部 伊藤博永編

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2009年9月 5日 (土)

五十六話 民主党政権と雇用

 民主党が大勝し、政権交代後の政策が一体どうなるのか、全国民が固唾をのんで見守っている、と言うより、お手並み拝見という様相でしょうか。
 中小企業の人事に関連しては、とりわけ雇用政策のゆくえが注目されます。製造現場への派遣の原則禁止は実施されるでしょう。小泉改革以前に戻ります。原則外は専門職制が敷かれ、特定の技術系のみ可能となるように思われます。製造現場派遣禁止によって、派遣社員を正社員にと言っていますが、それができないから派遣に頼って来たのです。中小企業が困るのは、現実に仕事の波の高低、繁閑が大きいのに、高いときに合わせて人を雇えないからです。海外と競って生き残るには、コストをぎりぎりに絞り、納期と品質要求に応えて行かないとならないからです。もっと付加価値の高いものづくりにシフトすべき、という声もよく聞かれますが、それはまた別の話で、それは個々の企業の取組みの話です。中小企業は対応して行かないと、仕事を外国企業にに取られるか、大手は海外に工場を移し、雇用は海外へ流れることになります。
 製造現場派遣が小泉政権以前に戻ると大半は実際にどうなるかと言えば、派遣が請負になります。請負は請負元が雇用しますから、雇用者は派遣よりも安定します。でも、現行の請負の法律では、現実には中小企業で使えません。ほとんどが、いわゆる偽装請負になってしまいます。もう少し、現実に即して法の修正が必要です。そうしないと、中小企業には選択肢がなくなってしまいます。
 民主党のマニフェストの雇用拡大政策は今のところ助成金ばかりです。助成金は梯子ですから、ずっとではなく、いずれ外さなければなりません。それまでには景気が良くなり雇用が拡大する、ということでしょうが、問題は仕事そのものがこれから益々変動することです。従来と違う、大きく変動する仕事にも対応できる雇用制度にしないかぎり、雇用は生まれないでしょう。一旦、失業率が高くなると、仕事は選べば雇用が犠牲になる、国は仕事を選べない、ということをもっとよく考えるべきと思います。

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