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2009年12月

2009年12月28日 (月)

六十九話 社内教育のご相談

 関与先からの人材教育のご相談が多くなりました。20年ほど中小企業の人事コンサルに関わって、教育の大切さと難しさを痛感しています。
 まず分かった一番の原則は「教育は続けないと役に立たない」ことです。特に「基礎教育」はそうです。関わりの多い中小企業では、これはわたしの考えですが、社内教育としては難しいことはほとんど必要ないように思います。必要なのは、どちらかといえば「あたりまえのことができる基本のスキルを身につける」ことだと思っています。
 ところが、この基本のこと、基礎的なことほど続けるのが難しいといえます。なぜなら基本のこと、基礎的なことは単純で退屈なことが多い上に、繰り返し行う必要があるからです。例えば、「わかりやすい報告」のスキルを身につけるためには、「結論を先に言う」など5つほどのあたりまえのポイントがありますが、繰り返し練習しないと、ふだん普通に使えるような自分のものになりません。
 でも、どこの会社でもなかなか出来ないからこそ、行っている会社とそうでないところとで、しばらくもすれば歴然と差がついて来ます。ですから、あの手この手と学習を続ける方策を打っても、それだけの値打ちがあります。それだけのものが返ってきます。

 教育の大切さについて、2005年に亡くなったドラッカーの遺作となった「ドラッカーの遺言」(講談社) Photoの次の言葉を紹介して締めくくりにしたいと思います。「・・・実はこの50年間で最も大きな変化は、教育のレベルにおいて現れました。かつては学校教育の修了時が学習の終了時であり、学業を修めた者は学校と縁がなくなるというのが常識でした。ところが現在では、学校教育の修了時こそ、真の意味での学習の開始時期を指し示しているのです。・・・知識社会において成果を挙げ得る人間であり続けるためには、スキルを更新する教育を何度も何度も繰り返し受けることが必要となります・・・つねに教育に立ち返るこの姿勢こそが、個人のイノベーションを促進してくれます。」

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2009年12月20日 (日)

六十八話 新刊「電話サポートやめたら、みんな幸せになれた!」

 ブロバイダーを経営している横山正という方の新刊「電話サポートやめたら、みんな幸せになれた!」 (明日香出版社)は相談、クレームの電話がひっきりなしというのが当たり前のネット関連のビジネスにあって、逆転の発想と言える内容でした。最近の成功しているビジネスモデルの特徴は「コンセプトがぶれない」ことにあると思っていますが、この本の企業も同様のことが言えるように思います。
 ネットビジネスや通販など、どこでもコールセンターも実態はたいへんなようです。CMなどで紹介されているような、常識のあるお客様とのきれいな遣り取りばかりではなく、まったく理不尽な客の理不尽なクレームに電話サポート係はくたくたのなっているようです。現実は消51xu4tvmq0l__bo2204203200_pisitbsti 耗するばかりで達成感のない仕事、この本にも電話サポート係はそのように出ています。確かに、全てではないにしろ、多くのコールセンターの仕事はそのような面が否めないでしょう。だから、それをやらしている会社はけしからんとか、人材の使い捨てだとか批判しても、必要である限りその仕事がなくなることはありません。
 でも、仕事はかたちを変えることはできます。仕事の機能を変えずに、かたちを変えることは可能です。それにより、顧客、電話サポート係、会社がWinWinの関係になる。この会社はそのことを実践し、証明しています。
 実は、わたしどもの仕事である「人事」の発想は、常にこうあるべきと考えています。そもそも「人事」に関する問題は矛盾だらけで、「賃金は上げてやりたいが、コストは押さえたい」類のことばかりなのです。けれども、顧客、社員、会社が満足しなければ、人事コンサルは失敗なのです。それを可能にするのは「しくみ」しかありません。「しくみ」は簡単には考えつきませんし、考えついても実行はもっとたいへんです。そのためには「継続したぶれないコンセプト」が必要です。そのことをあらためて教えてくれた本でした。

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2009年12月10日 (木)

六十七話 人事の話と成熟産業

 先月は珈琲商工組合さん、今月はトラック協会さんと講演が続きました。両講演とも弊社新刊「一人前社員の新ルール」をお配りして、「人事」についてのお話をさせて頂きました。この景況でとかく業績に直結することが、どうしても企業の優先事項となってしまいますが、企業はやっぱり「人」が大事。最後は「人」の力、また悩ましいのも最後は「人」で、その意味では「人」の問題を「人事」の観点から見れば、企業もまだまだできることがある、という内容のレクチュアとなりました。
 どちらも成熟産業の代表のような業界ですが、同様の産業は沢山あります。成熟産業はパイは拡がらず、人材は集まりにくく、IT化しにくく、話題にもほとんど上がりません。新聞や雑誌にはとかく目新しい新鋭の企業が取り上げられがちですが、それも大切ですが、日本の企業の大半を占める、このような成熟産業のあまり参考とはなりません。
 人事コンサルをやっておりますと、成熟産業の個々の企業の舵取りこそが、日本経済を支えているように思えてしまいます。また実際、派手ではないけれども、底堅く長きにわたって、会社を維持しているところが数多くあるのです。でもそのような会社は「人事」に関して少々、「あとまわし」が多いのも本当です。外から見ていて、ほんの少し「人事の視点」を取り入れれば、まだ良くなると思える会社が多いのも事実のように思います。

 珈琲商工組合さんで私の前のレクチュアが大手商社の方による南米のコーヒー豆の話でした。コーヒーには表作と裏作があること、コーヒー豆の木の樹齢による入れ替えで、収穫が減り、高騰するかもしれないことなど、知らないことばかりで参考となりました。こういう話を聞くと毎日飲むコーヒーの味もまた違ってきます。

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