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2010年1月

2010年1月24日 (日)

七十二話 良い会議

 よく会議などで「もっと会社全体の利益でものを言え」とか、社長がどなっていたりしますが、これまで関わった企業を見ても、会社がずっと続いて行く前提で会社全体の利益という視点で仕事を見ている者というのはおよそ、トップの社長一人ぐらいではないかと思います。他の人はだいたい自分の立場で仕事を判断しています。部署の代表の発言と言っても、たいてい自分の利益です。
 でも、社員と言うのはそもそもそういうもので、会社と言うのはそのようなはところではなでしょうか。ですから、トラブルなどがあれば「それは営業がきちんと指示をしていないからだ。」とか、「製造が自分のペースでしか仕事をしないからだ。」とか会議でも部署間のなすりあいに終始したりしてしまいます。
 会社が良くならない、根本的な問題の多くがここにありますが、ということは会議などでは必ず会社全体の利益の視点で物事をジャッジする人が必要になるということでもあります。逆に言えば、会社の会議というはそのためにあると言えますし、会議は会社全体の利益の視点を共有するために会社が持つ仕組みの数少ない一つとも言えます。
 よく、会議のあり方などの相談を貰ったりしますが、良い会議とはトップが会社全体の利益の視点で物事をジャッジすることにつきると思います。それはそのジャッジPhoto が正しいかどうかと言うより、ジャッジすることが大事ということでもあります。それができているかどうか、長期に伸びている会社の条件の一つのように思います。
 「残業ゼロの仕事力」(講談社) をヒットさせた元トリンプインターナショナルジャパン代表の吉越浩一郎氏の最新刊「吉越式会議」(講談社) にもそのことがきちっと書かれていて、260頁以上ある分厚い本ですが、この本の価値はその一点にあると言えます。

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2010年1月15日 (金)

七十一話 アナザースカイの「坂の上の雲」

Photo 司馬遼太郎の「坂の上の雲」(文芸春秋)に、明治維新という革命の特徴は、原動力となった人材が大都市などの中央にではなく、地方に分散していたとあり、それは世界史的にも稀有なことだったと書かれています。
 非常に勉学心旺盛で外国語にも精通していた高いレベルの知識人が地方の藩にいた、というのは地方の武士階級に時間があったのと、藩が競って教育を奨励していたからでしょうが、明治維新とその後の近代化のスピードを見ると、そのエネルギーの高さが相当なものだったことが推測できます。

 今、中国やインドの若者の勉学心は凄まじいものがあります。しかも地方に広がっています。個人の立身出世が国の近代化という目的に合致するという時代の只中で、まさに明治の日本と重なります。残念ながら、「坂の上の雲」は中国やインドという異国の空に行ってしまいました。
 でもよく考えれば、これから直ぐ隣のその異国の地で大変なことが始まるわけです。アジアの成長が長期に続くことになります。かつて経験したことのない経済の隆盛が直ぐ隣りで起ります。それは若者の旺盛な勉学心だけを見ても、間違いないことが分かります。
 そのような中、間近の日本の経済に影響がないわけがありません。日本もアジアの経済発展に大きく巻き込まれて行くに違いありません。
 「坂の上の雲」はもう日本にはありませんが、これからアジアをアナザースカイに「坂の上の雲」を掴みに行く若者が続々と出てくるに相違ないでしょう。そのときの成功者もきっと旺盛な勉学心を持ち合わせているはずです。

 

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2010年1月 4日 (月)

七十話 2010年人事の課題①

 日本の製造業のしくみはよくできています。とくに海外の工場などを見ると、それがよくわかります。海外でも競争力のある、成功しているところは皆、日本式を取り入れているように見えます。品質、納期、コストのレベルを継続して高めてゆくには完成された一つのビジネスモデルなのでしょう。。
 その製造業のビジネスモデルによく適した人事制度としては職能資格制度があげられます。自社で完結できるこの制度はわかりやすく、中小の製造業にまでよく普及しました。。
 製造業以外の業種においても、日本型製造業のしくみが当てはめることができれば、品質、納期、コストの点で競争力を高めることができるように見えます。日本型製造業のパターンに持ち込めれば成功が約束されていると言えそうです。ただ残念ながら、うまく当てはまる業態はそれほど多くはありません。製造業では成功した職能資格制度も同様で、製造業以外の多くの業種でうまく当てはまっているようには思えません。特に職種別の専門性が問われると共にその専門性がその業界で共通な業態においてです。そのような業態は広い意味のサービス業に多く見られ、大小の差はあるものの製造業にはない雇用の流動化が見られます。。
 各統計機関の数字を見ると、日本の製造業のGDPに占める割合は名目でおよそ20%です。広い意味のサービス業はおよそ70%弱あります。製造業の生産性はこの10年間をとっても5%以上あがっています。反面、サービス業は情報通信を除いて概ね横這いもしくは下がっています。数字から見ても日本経済の活性化、成長にはサービス業の生産性の向上にかかっていると思われますが、同様にサービス業にフィットした人事制度の新しいモデルの必要性が問われています。。
 それはおそらく、これまでと少し発想を変えなければならないようなものと考えられます。高い専門性と人材の適度の流動化がサービス業の生産性の向上の鍵で、それにフィットした賃金、人事のしくみが必要に思われます。それには専門別のスキル・レベルとそれに対応した賃金水準が職種ごとに必要になり、それはこれまでのような各企業ごとの対応ではなく、業種としてのセッティングが必要になると予測されます。今年はこの動きの一端が見えてくるように思われます。

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