九十五話 職業観その①
8日に私どものセミナーで、ネットのピアノ販売で成功された㈱ハーモニアの石山社長
様(写真右)に講演をいただきました。お話が巧みで面白く、感心いたしました。満員の参加者でしたが、皆さんたいへん満足されて帰られました。
そのハーモニアさんのホームページに、チョーク製造の日本理化学工業の話が載っています。「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司 あさ出版)で取り上げられ、テレビの「カンブリア宮殿」でも紹介された社員の7割が障害者という中小企業の話です。(詳しくは本か、ハーモニアさんのホームページをご覧ください。)そこに、仕事をすることの意味の一つがきちっと書かれていました。
この会社が障害者の方を入れるきっかけとなった50年程前の話です。施設から頼まれて 仕方なく、就業体験として入れた二人のはじめての障害者の方が、朝は1時間も前から出社し、休憩時間も言わないと取らず、簡単なラベル貼りの仕事に没頭して手を休めることなく働きます。しかも、本当に幸せそうな顔をして一生懸命仕事をしていたそうです。
1週間の就業体験が終わる頃、社員の全員が現社長で当時専務の大山さんに「あの子達を本採用してあげて欲しい。足らない部分は私たち皆が何とかカバーします。だから、どうか採用してあげてください。」と、言って来たそうです。その社員の気持ちに打たれて、大山さんは本採用を決めました。
それ以来、障害者の方を少しずつ採用するようになりましたが、大山さんには一つだけわからないことがありました。どう考えても、会社で毎日働くよりも、施設でゆっくりのんびり暮らした方が幸せなのではないかと思えたことです。そんなとき、法事で一緒になった禅寺のお坊さんにそのことを尋ねると、次のようにお坊さんは言ったそうです。「そんなことは当たり前でしょう。幸福とは、①人に愛されること。②人にほめられること、③人の役に立つこと、④人に必要とされることです。そして、②③④の幸福は働いて得られるのです。」と。普通に働いてきた大山さんにとって、それは目からウロコが落ちるような考え方でした。
ドラッカーも著書の中で、「仕事とは単に企業に勤めて何かの役割をこなすとかいうような、単純なものではない。」と書いて、仕事を通じた社会とのつながりを示唆していました。同様にこの日本理化学工業の話から、仕事の種類や会社でどんな役割をするかにかかわらず、仕事はそれ自体に、仕事をする価値というものがあり、そのことに気づくことがその人に「充実」をもたらしてくれると教えてくれています。机上では学べない、いえ、感じとることができない職業観の基礎となる部分であり、仕事で悩んでいる人にはまず、知っておいて欲しいことではないでしょうか。
文中のエピソードは「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司 あさ出版)からの引用をもとにしています。
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