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2010年8月

2010年8月25日 (水)

百一話 烏兎怱怱(うとそうそう)

 なんとか101話続いたのでブログのタイトルの説明です。「烏兎怱怱」とは、月日が過ぎるのが早いさまを言います。古代中国では太陽の中に三本足のカラスが、月の中にはうさぎがいると考えられていて、したがって「烏兎(カラスとうさぎ)」とは太陽と月、すなわち月日をさします。「怱怱」とはあわただしいさまのことですから、よって月日があわただしく過ぎることを意味しています。
 同意語で「光陰矢のごとし」という言葉がありますが、わたしがコンサルでどたばた走り回っているさまは、そんなスマートな表現よりも、うさぎとカラスが追いかけっこして、騒々しいイメージの方がぴったりしています。

 わたしのコンサルは半分が力仕事ですから、どたばたと走り回ることとなります。スマートに頭脳とパソコンだけで、というわけには行きません。
 そもそも、メインの関与先である中小企業の特性の一つは三日坊主です。傍から見ていて、続ければ良いとわかっていることがなかなか続きません(それはそれなりの事情もあるからですが)。例えば、目標管理などの「面接」も最初は管理職も「なるほど」と思い、取り組めば成果があがったりするのですが、残念ながら往々にして長続きしません。どうも「継続する」文字が中小企業の辞書にないように思えます。
 そこで、外部のわたしどもがお膳立てをして、やらざる得ない状況をつくったりします。ですから、この夏も大阪、泉南、岡山、東京、九州などと走り回ることなりました。対象者が20人もいれば1日仕事です。でも、行えば確実に成果が上がります。続ければ、ノウハウが組織に蓄積されます。
 会社もわたしどもも、目指しているのは「しくみ(制度)づくり」ではありません。目指しているのは成果です。しくみ(制度)は成果のためにあります。しくみをつくって、会社にお渡ししてお仕舞い、というわけには中小企業はとても行きません。

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2010年8月17日 (火)

百話 社長の仕事

 出版でお世話になっています明日香出版社の石野誠一相談役のブログに、中小企業の経営者が勘違いしやすい点のことが書かれています。最近の電子出版の大波に翻弄される出版業界によせてのことですが、核心をついているように思います。

51tfqnlhkzl__sl500_aa300_  『ここで気をつけたいのは、小さな会社は、時代の流れの先端に立とうとしないこと。得てして、若い社長や青年社員は、身の丈を自覚せずに突っ走ろうとします。しかし、ごく少数の例外を除いて消耗して、いつのまにか業界から消えていくことになります。
  世の中の流れをきちんと勉強し、追いかけながら、はがゆさをがまんしつつも、自社にふさわしくて、やるべきことをきちんとやる、そんな会社だけが生き残っていけるものです。』 
 ヒットを飛ばしては消える、激動の出版業界を生き抜いてこられた中小企業のトップの重みのある言葉です。

 同様に30人の商社の社長をされている寺井良治さんという方が、「日本一元気な30人の総合商社」(小学館)という著書の中で、『社長の仕事』について触れています。
 大手商社の社内ベンチャーから出発したこの会社でしたが、当時の親会社の社長から51ovmix5pfl__sl160_aa115_ 寺井さんが言われたことは「とにかく会社を残してくれ」だったそうです。でも、その言葉の意味がよくわからず寺井さんは長い間、「社長はなにをやったらいいのか」という答えをずっと引き摺っていたといいます。そんな折、ある会社の社長を引退された大先輩に「社長の仕事って何をやるんですか」と聞くと、その大先輩は「お前バカか」と、こういったそうです。「社長の仕事っていうのは、会社を潰さないことだ」寺井さんはそれですっかりモヤモヤが吹っ飛んだといいます。そして、会社を潰さないためには身の丈を知って、成長し続けないとならないと書いています。

 石野相談役の言葉も寺井社長のエピソードも、身の丈を知ることと成長し続けることとが矛盾しない点で共通しています。中小企業の経営の要諦かもしれません。

お陰様でこのブログも何とか100回を迎えることとなりました。「何をしているのか、よくわからない」と言われる、人事コンサルの一端を知ってもらえればとの思いで書き始めたブログですが、思いついたことを書き留めているうちに当初の意図から少々外れてしまったように思います。ここは軌道修正をと自分に言い聞かせつつ、まあ、思いつくままもいいのではとの囁きも頭の中に聞こえてきます。でも、ブログをお読みいただいている皆さまには、これからも少しでもお役に立つ情報を提供したいと思います。

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2010年8月 9日 (月)

九十九話 「背面販売」

 化粧品や医薬品の店頭販売や生命保険等の個別の相談に応じた商品販売など、直接に顧客と接して商品を販売するやり方を通常、対面販売といいます。
 前回に紹介した本「またあなたから買いたい」に書かれている列車内ワゴン販売も対面販売です。と、ふつうは思いますが、著者の斉藤泉さんは「背面販売」という言葉を使います。お客様である乗客の後ろ側からワゴンを押して販売して行くのをそう呼んでいます。
 そして、お客さまの顔が見える前からワゴンを押して行く「対面販売」に対して、顔が見えない「背面販売」の方がお客さまの発進する情報をキャッチして、販売員の方からアプローチできる点では軍牌が上がるとしています。お客さまがお弁当は持っているけれども、飲み物は持っていない、もしかしたら必要としているのではないかなど、冷静に観察できて推測できるといいます。顔が見える「対面販売」だと、迷っているお客さまは迷いを悟られまいとして、顔を背けてしまうのだそうです。凄い話しですが、「なるほど」です。

 そもそも彼女は「お客様が望んでいるのを察するのがサービスの原点」と言い、「自分だったらどうしてもらいたいか」を考えるのが原則と言い切ります。そして、顧客自身も気がついていないようなニーズを拾い出し、販売に結びつけます。「背面販売」はそのための有効な方法というのがわかります。
 普通の販売員も。「背面販売」を自然と行っているのでしょうが、彼女は自分の行っていることを客観的に捉えているがゆえに、「背面販売」なる言葉をつくります。
 この自分の行為を客観的に見れることは、これからの自立したプロフェッショナルとしての条件でしょう。しかも、それを言葉にすることによって、次の人材の育成につなげることがPhotoできますし、他の仕事にも応用できるようになります。
 皆さんの仕事でも「背面販売」はないか、一度考えてみるのも良いかもしれません。思わぬ顧客ニーズが見えるかもしれません。

  7日(土)に恒例の「淀川の花火大会」がありました。毎年、規模が大きくな2010_2 っているように思いますが、今年も大阪の北の夜空を染め上げました。丁度、わたしどもの7階建てのビルの屋上から、川面の打ち上げ場とその上空の開いた花火まで真正面に見えます。しかも、花火が上がってから約3秒で音が届く、ほどよい距離です。お陰で今年は見物に老若のお客さまが30名も来られて、ビアガーデンさながら堪能されました。大阪の世界一?暑い夏も捨てたものではありません。

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2010年8月 2日 (月)

九十八話 職業観②「またあなたから買いたい」

 5年ほど前に日経に掲載された、山形新幹線車内ワゴン販売員の記事を研修Photo用ケース・スタディ問題として今でもよく使います。百分間で弁当百十二個販売という驚異的な記録を持つ有名なパートの斉藤泉さんの記事ですが、最近、そのノウハウとなぜ「そこまでやるか」をまとめた単行本「またあなたから買いたい」(斉藤泉著、徳間書房) がでました。眼からウロコ満載の内容ですが、いろいろな見方ができます。まず何よりも驚きは、確かに、斉藤泉さんの時給は800円台から1200円台に上がりましたが、彼女がいまだに2ヶ月更新のパートさんであることです。勿論、歩合もありません。普通の販売員の2倍も3倍も売り上げ、商品企画も行い、テレビでも取り上げられ、講演でもひっぱりだこの彼女を会社は正社員にしたかったでしょう。でも 、接客の現場である車内ワゴン販売員を「自らの仕事」と考え、こだわる彼女はパートの身分を選んだようです。

 もともと彼女がこのように車内ワゴン販売員という仕事にのめり込むきっかけとなったのは、最初の研修で先輩に言われた「ワゴンは一軒の店、あなたはその店長」といPhoto_2う一言でした。このことは、現在の社員モチベーションに必要な共通の要件は何かをあてています。彼女は仕入れた弁当を残さず売り切り、しかも一人の乗客も売り切れで腹をすかしたまま帰すことのないパーフェクトをめざします。その目標は完結しており強力です。結果、会社の業績につながり、会社としての顧客満足にもつながっています。

 日本の強さは現場の作業者という人たちがクリエイティブであることです。明らかにトヨタはそれで世界一の自動車メーカーになりました。海外では考えられないことでした。この車内ワゴン販売員も他では考えられないでしょう。勿論、日本でも特例には違いないですが不思議ではありません。不思議なのはパートという身分の方です。
 斉藤泉さんの目線はどこまでも現場作業員です。現場作業員の視点で、顧客ニーズを予測し、綿密な段取を実行し、2年がかりでお弁当を企画し、通常のコンビニの時間当たり売上の軽く倍以上を稼ぎ出します。管理職ましてや経営の視点をもっているわけではけっしてありません。また、管理職や経営をめざしているわけでもありません。つまり、彼女にとって現場作業員は通過点ではないのです。彼女はあくまで車内ワゴン販売員というプロフェッショナルを追求します。
 日本もそろそろ、この職業意識に社会的な認知をきちっと与えるべきと思います。斉藤泉さんというパートさんの特例に頼ってはいけません。これまでの職業観は一般社員から始まって、管理職、役員という肩書をめざす一本道で、そうやって上がるのが社会的ステイタスでした(実際に上がるかどうかではなく、社会的なコンセンサスの意味でです)。でも、もうそれもそろそろ限界です。わが国もプロフェッショナルを軸とした職業観というもう一つの道ををもたないとなりません。そうしないと社員個人はいつまでも充足を得られないばかりか、会社ももたないでしょう。
 ただ、これは一企業の問題ではありません。社会の取組みとしての問題なはずです。

 

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