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2010年11月

2010年11月30日 (火)

百十四話 3年新卒

 16日に厚生労働省から「企業等の採用枠に学校等の卒業者が、卒業後少なくとも3年間は応募できるようにすべきもの」という指針が公布・施工されました
 今年3月卒業者で未就職の者が7万5千います。昨年より3万1千人の増加です。すさまじい就職氷河期ですが、この未就職者の不運がたいへんなのは、今年にとどまらず、ずっとつきまとうことです。日本の雇用慣習では、卒業者が一度新卒採用をのがすと、その後ずっと多きなハンディを背負うことになります。その理由はたくさんありますが、一言でいうと大手企業がこぞって定期採用一本槍でこれまでしてきたからです。
 定期採用、定期昇給、終身雇用、企業内組合と、日本のこれまでの発展を支えてきたシステムが逆に足を引っ張るような制度疲労を起こしています。この日本システムはセットですから、定期採用だけを取り上げても軌道修正することはできません。したがって、厚生労働省の措置は何の手立てにもならないでしょう。自分たちは手を打っていますよという言い訳にしかなりません。
 策の無さを露呈していますが、頭の良い彼らは充分承知しています。システムの変更に思い切って踏み込めないだけです。それはシステム変更に責任を取るものがいないからです。社会に雇用と賃金についての理念がないからです。一つを拾うともう一つは切り捨てないとなりません。そのためには理念と責任をとるものが必要です。このままだと何処かで行き詰まり、クラッシュするまで変ることはないように思います。

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2010年11月28日 (日)

百十三話 目標面接から~「じぶんごと」意識

 この10、11月も目標面接の指導で東へ西へと奔走しておりました。目標管理は長い関与先でかれこれ導入から15年以上経つ会社が結構ありますが、面接等で立ち会ったりしていますと、突然、「ひとが変わる」のを目の当たりにすることがあります。
 もちろん良い意味でですが、ひとが変わったようにヤル気が出る、今まで何を喋っていたのか分からないような人が突然きちっと説明できるようになり、前向きに話し出すなど、これまでにも何度もありました。その人個人のみならず部署全員が突然変わる例もたびたび経験しました。
 当然、勝手に、偶然にそのようになるのではありません。モチベーションのアップは、見ていますと必ず要因があります。その大きな一つのが、『じぶんごと』だと思います。今まで、きちっとやることはやっていたが、でもどちらかと言えば受身の意識、やらされ感だったものが、自分が何とかするという意識、自分から提案する姿勢にかわる、『じぶんごと』意識です。
 この『じぶんごと』意識はいろいろなことが重なって起こります。上司の仕事の与え方、目標管理という仕組みの理解(分かっているようで分かっていない人が実はほとんどというケースが多い)、評価と処遇の連動の理解(特にどうすれば昇格できるかなど)、目標達成が公に認められるという成功体験、などが鍵のように思われます。
 「わが社の目標管理も形骸化している」などとあきらめてはいけません。わたしどもで長く続けている会社の実績がそれを証明しています。

歌舞伎の語源は暴力をふるうこととかと読んだことがありますが、観客に息遣いが聞こえたりや汗がかかる距離で見ると、それもなるほどと頷けるところがあります。江戸時代の歌舞伎はさぞ猥雑さと芸術性が入り交ざPb120009 った魅力的なものだったことでしょう。現代の歌舞伎は立派になり過ぎました。狭い空間こそが相応しいように思われます。
 勘三郎のテント歌舞伎大阪公演を先日見ました。これで2度目です。前回は「法界坊」、今回は「夏祭浪花鑑」です。テントの大きさが江戸歌舞伎はこのようなものであったことであろうことを想像させてくれます。観客に水はかかるは、本物の大阪城を書割に演じるはサービス満点でした。まるで学生時代に通った状況劇場の赤テントです。やはり演劇はこうでなければ。それでも、満席でしたから一回で1千万円くらいの興行収入はあるでしょう。赤テントももう少し収益があったら、もう少し続いていたように思います。

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2010年11月16日 (火)

百十二話 人が採れる

 中小企業は恒常的に人材不足といわれていますが、今は人が採れます。関与先等でも募集を掛ければ、すぐに50名ぐらいの応募は集まっています。しかも、これまでは縁の無かったような学歴の者が来たりして、選ぶのに嬉しい悲鳴となったりしています。
 今年の新卒で職に就けていない人が昨年よりも、なんと3万1千人増えて7万5千人となっています。中小企業でも選べるぐらい応募が集まるわけです。もちろん、景気の回復が見えても大手企業が採用を抑えているからで、中小企業にとっては好機ですが、採用に躊躇するのは中小企業も同じです。景気の先行き不透明感、派遣の規制問題、最低賃金のアップ、円高、高い税率、よりコストダウンの要請等から、大手企業は国内に投資をしません。工場の海外移転、海外企業の買収、海外の下請けの活用など、雇用の海外流出はすさまじい勢いですが、イコール仕事の流出ですから中小企業も煽りをくらって、採用どころではないところがほとんどです。
 現在、中小企業で人を採れるところはきわめて良い会社です。人材の差は3年後ぐらいから効いてきますから、このような会社はますます良くなる可能性大です。中小企業は採用に慣れていないので、慌ててよく選ばず採用しがちですが、試験、面接と充分時間を掛けるべきです。大卒の初任給平均も0.7%ダウンしていますが、安く採用できるからといって、自社の賃金体系を崩してまでしてはいけません。あとでしっぺ返しが来ます。それよりも、自社に適した人材をきちっと選ぶべきです。

Photo分とご懇意にして頂いています、桂雀三郎さんの独演会が11月23日に大阪サンケイホールで行われます。出し物は「らくだ」「三十石 夢の通い路」。つうの方によると、なかな か難しい演目だそうです。上方お笑い大賞最優秀技能賞 受賞の個性派雀三郎さんがどう演じるか見ものです。落語ファンならずとも是非どうぞ。もう15年ぐらい前になりますが、父の法事で(賑やかにするのが家系で)雀三郎さんに一席お願いしました。座敷の卓袱台の上での落語に集まった皆さんは呆気にとられていましたが、賑やかな法事となりました。若かった雀さんも今やサンケイホールを満席にする実力派となられました。(写真は一昨日、私の妹に日本舞踊を教わる雀さん。研究家です。)

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2010年11月 9日 (火)

百十一話 景気の動向Ⅲ

1)予想以上の上半期
 今年の上半期の業績が予想以上に回復を果たした上場企業が多かったように、中小企業でも良いところが結構ありました。エコ関連の補助金や新興国の回復によるところが大きかったようです。リーマンショック前の数字にかなり近づいてきましたが、9月以降は補助金切れとこの円高とでかなり落ち込みそうな気配です。輸出入の数字を見ると、円高による輸出の落ち込みを輸入がカバーできるほど伸びておらず。やはり、輸出が伸びないと国内の企業は活性化しません。しかし、現在の対ドル81円前後の為替で、まだ思ったほどには輸出の数量を下げていないところを見ると、新興国の伸びが凄まじいのだと思います。これで、90円代はもはや難しいにしても、85円より下がれば、景気は格段によくなるに違いありません。米国の金融緩和QE2発言にも今のところそれほど動かなかった円、財政危機が言われている割には何故かとても低い日本国債の利回りなど、85円より下がる可能性はなくもないように思われます。
2)為替と雇用
 大手は対ドルの為替レート80円台から70円台を想定し、EMS等アジアの生産委託をドル払いにして輸入するなど、それでも利益が出せる体質へ転換しつつあります。企業の対応力は大変なものですが、国内の雇用は低下するばかりです。大卒の内定率も91.8%とこの10年で最低で、24年度はさらに悪くなりそうです。民主党は雇用を拡大する方策があるといいながら、雇用が流出する政策ばかりが続いています。賃金の底上げが雇用の確保に繋がるというのなら、そろそろきちっとロジックを示めして欲しいものです。お陰で中小企業はこれまでにない人材が確保できる状況となりましたが、仕事が国内から消えれば元も子もありません。
3)伸びるインフラ関連
 エネルギー、輸送、水、環境などのインフラ関連の海外受注等の新聞記事が毎日のように出ていますが、日本の得意分野で、新興国に勝てる有力分野です。長期的には伸びるでしょうし、関連する中小企業も恩恵を受けています。ただし、単純作業的な仕事はあまりありませんから、それほど雇用の拡大にはつながりませんし、何かしらそれなりの技術をもっているところのみが潤うことになります。またスポット型の発注が多く、家電やクルマのように継続性の点では期待できないのも、中小にとっては取り組みにくい点でしょう。でも、すでに先行する中小企業はそれでも利益を出して行ける体制をとりつつあります。

   51sekha4z6l__sl160_aa160_人で現代美術家の大塚新太郎君から最新の作品の写真とメールが届きました。昨年は やはリーマンショックの影響から受けていたオーダーが凍結Suntoryfull1状態だ ったそうですが、今年になって復活しはじめ、忙しいようです。シンガポ ールのコンドミニアムの作品との事ですが残念ながら版権の都合でお見せできません。東京のサントリーミュージアムにある彼の作品の系列に見えます(写真右)。建築専門誌「GA JAPAN107」にも取り上げられています。美術の世界は最も早く景気に左右される一つでしょう。

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2010年11月 1日 (月)

百十話 労働経済白書から

 2010年版の厚生労働省労働経済白書から、企業の人事施策を見ると、「これまで重視していた施策」「今後重視していく施策」で、いくつか特徴的な傾向があるのがわかります。まず評価では二つあげられます。一つは「チーム業績」の重視であり、もう一つは「中長期的Photo な貢献度」の重視です。この二つのウェイトが上った分、「努力、取組み姿勢」「経験」「身なり・勤務態度」が下がっています。成果主義の見直しの流れのなかで、やはりもとの属性的な評価に戻るのではなく、成果・貢献度がより掘り下げられて来たように見えます。
 賃金決定の要素については、もっと特徴的に現れています。「年令、勤続、学歴」などの年功的、属性的要素は大きくダウンし、「複数の職務をこなす」ことや「中長期的な貢献度の蓄積」が大きくアップしています。職務給的な動きは一段落し、より日Photo_2 本的な仕事のあり方の強味を重視する現実的な傾向が見られます。やはり、成果主義→偏った成果主義の反省→より本質的なものへ、という流れにあるようです。これらのことは、大手企業だけのことのように思われがちですが、まったく同じ傾向が、100人未満の企業にも見えます。そのことをデーターがきちんと示しています。

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