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2011年1月

2011年1月27日 (木)

百二十二話 海外で稼ぐ

 日本企業の海外への直接投資の勢いは治まる気配がありません。海外進出企業の好業績が保証しています。国内の空洞化、雇用が心配ですが、法政大の小池和男教授が英国の先例をあげて意外に大丈夫と日経に寄せています。
 英国企業の海外部門からの所得はGDPの6%にのぼり、GDPの実に6割をこえる海外直41qiro0itvl__sl500_aa300_ 接投資残高とその高い収益率のおかげだといいます。日本の海外直接投資残高はまだGDPの14%ですが、増加速度からすると数年で25~30%になるとしています。しかも日本も収益率が良いと。問題は雇用ですが、これについてもかなり貢献するとしています。仮に海外で4万人、国内で1万人を雇用する企業があるとすると、海外派遣要員の必要人数は国内1万人の過半に達するとしています。そして製造業の場合、その中心となるのは管理職ではなく、ポテンシャルの高い現場要員だといいます。つまり、現場の監督職クラスといえるでしょうか。マニュアルに書けない問題や変化に対応する、このクラスの人材層の厚みが日本の競争力の源泉としています。なんとも頼もしい話しです。これから、海外OKの主任・係長クラスの価値が高まります。

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2011年1月18日 (火)

百二十一話 失敗をバネとする土壌

 ノーベル賞医学生理学賞の有力候補とされる、iPS細胞の山中伸弥京都大教授が母校の高校で講演されました。テーマはビジョンを持つことと失敗することの大切さでした。講演の中で自分自身のこれまでを振り返ると失敗の連続だったと言っています。教授はもともと研修医からスタートし、その頃は不器用で何をやってもへまばかりで、現在の成功と凛々しい51gy2wzfbrl__sl500_aa300_ 容姿からはとても想像できないことですが、「じゃまなか」と言われていたそうです。自分には向いていないと研修医から逃げ出しましたが、現在の成果につながる基礎研究に打ち込むことができたのは、ビジョンをしっかりと持っていたからだとしています。
 教授は高校生にこれからの人生において二つのことが大切と説いています。一つは、ビジョンをもって努力すること。日本人は勤勉だから、ついつい何を目指しているのかもわからずに打ち込んでしまいがちだと。もう一つは、失敗は恥ずかしいことではない、もしかしたら失敗したことが楽しいことの始まりかも知れないとしています。
 とても勇気づけられる言葉です。でも当たり前ですが、どこの職場でも、「失敗してもいいよ」とは誰も言いません。「失敗は恥ずかしいことではない」はそれぞれが持つべきものなのです。けっして会社の風土でも上司の姿勢でもありません。勘違いしてはいけません。会社や上司ができることは、会社のビジョンを示すことであったり、チャレンジを褒めることなのです。

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2011年1月10日 (月)

百二十話 人事の選択肢

 日本の人事システムはこれまで非常に上手く行っていました。「日本型賃金制度の行方」 を書いた須田敏子氏も新著「戦略人事論」 で次のようなことを言っています。日本の人事管理Photo の特徴は新卒一括採用、年次管理、査定つき年功制、ジェネラリストとスペシャリスト半々の一律型人材育成、遅い選抜の昇進、ローテーション付き一律型人材育成、人ベース社員格付けと賃金決定などで、これらは長期雇用のもとに非常に合理的なしくみだったと。そして、この独特のシステムは、欧米のそれとことごとく対照的ですが、その違いのおおもとの要因は雇用が流動的か否かにあるとしています。
 日本の人事システムはとっくに曲がり角に来ています。変化の激しい、グローバルな競争の中で、新しい人材管理が必要にもかかわらず、抜本的に変えることができません。須田氏414qy0unnkl__bo2204203200_pisitbsti によれば、上述のそれぞれの特徴は互いに補完関係にあり、部分的に変更してもデメリットのみが出てしまうこと、1社だけが変更してもけっして得にならないことで、簡単には変わらないとしています。
 一旦雇用すると取り替えられない人材に派遣と請負も塞がれ、解雇法制はより厳しくなり、社会保険など雇用コストは増すばかり。これらに対する企業のその答えが設備投資の海外流出で、円高ばかりがその原因ではないでしょう。
 長期雇用は必要ですが、人事管理による戦略の選択幅を狭めています。須田氏も長期雇用は比率の問題としています。急速に変化する企業環境、競争力をなくすか、海外へ出るか、社会システムとしての人事を変えるか、選択肢は他になさそうです。

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2011年1月 1日 (土)

百十九話 メンタル不況

 海外での仕事の経験のある人に聞くと、誰もが日本の社員の質の高さを言われます。大晦日の村上龍氏のカンブリア宮殿でも、ニコニコ動画の夏野剛氏が「入りたての若手でさえ、する仕事がなければ自分で仕事をさがすのは世界中で日本だけだ」というようなことを言っていました。つけ加えて、現在の閉塞感に対して「日本はまだ、人、おカネ、技術力が揃っている」と。
 そう考えると、多くの人が行っているように、現在の不況はやはり「メンタル不況」なのかもしれません。不況の原因が人の気持ちであるなら、モチベーションをあげれば打開できることになりますが、そういえば、このところの成功している会社は共通して社員のモチベーションが高いと思います。また、村上龍氏もカンブリアのゲストで来る会社の社員には共通して「やらされ感」がないとも言っていました。
 そのことについて、品川女子学院校長の漆紫穂子氏が現在の若い人のモチベーションの鍵は4つほどあるといっています。一つ目はその「やらされ感」がないこと、二つ目は好きなことは放っておいてもやること、三つ目は「皆のため」というシチュエーション、四つ目は上手く行くこと、つまり成功体験。
 モチベーションだけで不況が打破できるかどうかは兎も角、企業の優劣の格差の鍵になることは間違いなさそうです。人材を活かす方法はまだまだあるということでしょう。
 わたしの今年の人事のキーワードには、「やらされ感の払拭」をあげたいと思います。

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