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2011年5月

2011年5月14日 (土)

百二十三話 『正義』をめぐる哲学

 今年の2月に、この本をわたしに紹介したのは、友人で進学塾の開成グループ代表太田明弘さんです。「今一番面白い本ですよ。2日で読んでしまいました」というものですから、51idakozvnl__sl160_pisitbstickerarr わたしも早速に購入しました。マイケル・サンデル著「これからの正義の話をしよう」(早川書房)はなるほど、とても興味深く、また参考になり、明晰な太田社長のように2日とは行きませんでしたが、この分厚い専門書をわたしも1週間ほどで読んでしまいました。これほど、わかりやすく、また読み手を引き込む哲学書はないのではないでしょうか。さすがハーバード大学で空前の履修者数を記録する白熱教室「JUSTICE(正義)」をベースにしたベストセラーであるわけです。
 NHKで放映された講義のビデオでは冒頭に「暴走する機関車」という興味津々の架空の話51wjqvjphel__sl160_pisitbstickerarr からはじまりましたが、この本にはそれ以外にも、現実の事件、エピソードがふんだんに盛り込まれています。身近なところでは、まだ記憶に新しいリーマン・ショック後の企業救済の例が使われています。本の中でサンデルが述べているように、「哲学は机上の空論では断じてない」というのが、とてもよくわかります。同様に事例で紹介されている「前の世代が犯した過ちについて、私たちに償いの義務はあるのだろうか」という問いは、今なお蒸し返される日本の戦後補償の問題であり、これから大きな課題となる年金の問題につながります。
 サンデルはこういっています、「つまるところ、これらは『正義』をめぐる哲学の問題なのだ。社会に生きるうえで私たちが直面する、正解のない―にもかかわらず決断を迫られる―問題なのだ」と。深く議論し、決断することが、日本のわれわれに今、最も課せられた課題であることを再認識させられた一冊でした。

今朝のTBS「がっちりマンデー」で『凄い職人』の東大阪編が放送されました。もしやと思っていましたら、以前に人事制度で関与させて頂いていた工具の会社が取り上げられていました。当時から、とんでもない技能をもった人が何人かいて、すごいことを何でもないようにいうものだと思っていましたが、やはりでした。東大阪の中小企業にも知られていない『凄い職人』が普通にまだまだ大勢活躍しています。世界一の技術が知られずにいます。生き残ることが大切です

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2011年5月 4日 (水)

百二十二話 エネルギー問題

 TVでもおなじみの環境学の武田邦彦さんが2009年に出版した「偽善エネルギー 」(幻冬舎新書) という本で、原発について次のような内容のことを書いています。「日本の原発は安全だが、安心できない。安全と言うのはチェルノブイリのような欠陥原発と違い、日本の原発はすべて軽水炉だからで、爆発を自動的に止められるからです。でも、安心でないのは、そ41vfhi67lfl__sl500_aa300_ れは『原発は地震で倒れる』からです。ほんとうは地震で倒れない原発をつくれるのにそうなっていないのには、二つの原因があります。一つは日本には優れた地震学者がいること。もう一つは原発の安全基準を官僚が作っているからです。地震学者は学者ですから、その時点でわかっていることしかわからない立場で、立地地域を詳しく調べて最大どのくらいの地震がくると結論します。その予測をつかって官僚は『地震に耐えられる設計になっています』と答えます。予測が間違っていたらどうすると言う問いに対して『最新の知識で判断する以外に方法はありません。それが一番安全です』と返答します。官僚の言い分はつまり、『地震学者が間違ったら、原子炉は倒壊する。そのときは付近の住民はあきらめてくれ』というものです」残念ながら、この本に書かれたことが今回、現実となってしまいました。そして武田先生は次のように続けています。「官僚は国民の命を守ろうとはしていません。彼らの行動の第一規範は『自分がいいわけできるかどうか』にあります」奇しくも、官僚のコントロールを公約に掲げた民主党政権下でこのような原発事故が起こりました。果たして民主党はそのような対応ができているといえるでしょうか。あるいは見失っていないでしょうか。日本の優れた技術力や現場力は世界が認めるところですが、これからの課題はなにか、この本が明確に教えてくれています。

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