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2011年8月

2011年8月23日 (火)

百三十四話 「そして船は行く」

 神戸の港を出て行く大型船を見て、昔見たイタリア映画、「E LA NAVE VA (そして船は行く)」を思い出しました。

 海外の工場などに行くと、押しなべて日本国内の工場はきちっとしていて、皆よく働いているのに気がつきます。海外の工場との大きな違いは、現場の単純労働作業員クラスの質の高さです。製造業の基本である品質、コスト、納期が末端のひとり一人に浸透しているのがPhoto_2 よくわかります。特段のインセンティブがなくとも仕事への意識がふつうに高いのです。日本にいるとなかなか気がつきませんが。
 これは日本人のもともとの資質のように見えますが、たぶん社会に備わったものではないでしょうか。
 長い目で見ると、製造業に限らず企業は品質、コスト、納期の基本に戻ってくるように思われます。長いスパンでは結局、それが競争力とすると、日本もまだまだいけそうに思えてきます。
 リーマンショック、震災、節電、円高、ドル・ユーロ不安と日本の企業にとっては、ずっと戦時体制みたいなものです。危機感のない政府を尻目に、企業は黙々と品質、コスト、納期に磨きをかけ、局地戦に勝ち残る戦いをひたすら続けています。でも、まだまだ続けないとならないでしょう。そうすれば、やがて競合は脱落していくに違いありません。それができるのが、日本社会の本当の強さだと思います。

 自宅の目の前の港に、今日も積荷を満載にしたコンテナ船が入り、積荷を降ろし、また新たな積荷を満載にして出航します。毎日々々この繰り返しです。ただひたすら品質、コスト、納期に研きを掛けながら。今日も、明日も、「E LA NAVE VA そして船は行く」です。

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2011年8月15日 (月)

百三十三話 人事の優先順位

 忙しいときには、とても人事なんかに手がまわらず、逆に時間がとれるような状態だと、受注の数字をつくるのに奔走して、やっぱり人事に手がまわらない。その繰り返しで、大事とはわかっていても、いつまでたっても人事が整備されず、そのことが人の定着率を下げ、仕事の質を低下させ、余計に現場を混乱させ、このジレンマを余計に加速てしまいます。結局、このような会社にとって人事の優先順位はそれほど高くはないのでしょう。でも、このような会社はけっこう多いものです。先日、ご相談の急成長する会社もそうでした。
 この場合の人事とは何をさすのでしょう。どうすれば給与があがる、昇格するなどの処遇の仕組みも一つでしょう。でも、早急に必要な人事とは、「人と仕事の管理」であることがほとんどです。それぞれに仕事をしているのですが、いわば、誰が何をしているのか、誰もよく分かっていない状態なのです。よくあるケースでは経営者も実務に携わっていて忙しく、代わって管理する人もいない場合です。急速に伸びた会社によくみられます。
 一時的にはこのような状態は伸びている会社の通過点で避けられませんが、このままだと、永遠に問題は解決されません。どこかで方向転換しないとなりませんが、伸びているときだと忙しい経営者には考える余裕もありません。
 解決方法は二つしかありません。自分の仕事を誰かに振って、管理の時間をつくるか、誰か管理者を入れるかです。けれども、往々にして人事の優先順位を軽んじる会社は「間接部門にお金を掛けたくない」のです。
 「人と仕事の管理」で「仕事の質」が高まることをどこかで気づくまで、残念ながら悪循環は続きます。

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2011年8月 7日 (日)

百三十二話 自動車産業の求人難

 震災による自動車関連部品の供給が回復し、秋から関連各社が本格増産の体制に入ります。厚生労働省のデータで自動車組立工(輸送用機械組立・修理)の6月の新規求人倍率が、震災直後4月の0.56倍から1.04倍と急回復しています。秋までに自動車大手だけでも募集人員が1万人規模に達すると見られています。あまりに急な採用増のために、募集に応募が追いついていません。9月以降は過去に類を見ない採用難になるとの予測もあります。リーマンショック時に期間従業員の雇い止めなのでイメージが低下しているのと、震災後の失業給付がまだ効いていることも影響していると考えられます。
 当然、これから賃金が上がってきます。日経によると、製造派遣の募集時平均時給は昨年下期で1029円(関東)ですが、リーマン前より4.6%低い水準んですのでそこまでは近づいて来ると考えられます。
 裾野の広い自動車関連産業の影響は多大です。製造業の求人難は当面広がるでしょう。急な落ち込みと急な回復がが主な原因ですので長くはないでしょうが、規模が大きいのが懸念されます。
 いずれにしても、中小企業は景気が回復すれば、今度は雇用の確保に悩まされそうです。

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