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2012年7月

2012年7月29日 (日)

百八十話 商社の台頭

 低迷する大手電機が多い中で、商社の元気が突出しています。三菱、物産、伊藤忠、丸紅、双日とそれぞれ得意分野、特徴を持ちながら着々と業績を伸ばしています。近年の資源高をベースにしつつ、ビジネスモデルを多様化し、リスク分散と収益源のバリエーションを高めています。
 一時影の薄かったように見えた商社が復活したのは、グローバル化や新興国の台頭という背景だけでは無いように思います。情報収集力とリスクをとる決断の早さは、他の会社の追随を許さないでしょう。第一線の現場に近い人材が見極め、決定できる、そのような組織を着々とつくってきたように思われます。景気を言い訳にせず、自分で商売をつくれる人材の育成と責任、権限の移譲のしくみです。人事制度に力を注ぎ、試行錯誤を繰り返して来ました。今の繁栄はその成果といえるのでしょう。
 「ノミの天井」「ゆで蛙」「落とした鍵」という、伊藤忠岡藤社長の社員へのメッセージがエコノミスト誌に載っていました。三つとも「変化」をキイワードとする有能な社員の病だそうです。商社は絶えず人事制度を見直し、社員に刺激を与えています。

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2012年7月22日 (日)

百七十九話 継接ぎの制度

 仕事柄、いろいろな会社の人事制度を見る機会が多いのですが、相談をいただいた会社の人事制度で、ときどき「継接ぎ型」というのを目にします。様々な会社の制度の「良いところ取り」をしたものです。等級制度は大手のもの、評価制度は同業の事例、賃金体系は自社独自のものというようにです。それらが関連づけられ、整合性が取れていればそれでも良いのですが、実際はばらばらな運用になっていることがほとんどです。そうすると、やはり上手く機能しないのです。 したがって、専門書や他社事例を参考にする場合には人事制度全体を見ながら取り入れる必要があるといえます。
 ユニークな人事制度で有名な未来工業㈱という中堅の企業が岐阜県にあります。創業者もユニークなのでよくマスコミにも出ています。定年は70歳、休みは有休以外に140日、年末年始は20日連休、報連相禁止、残業禁止、営業所の設立は社員の裁量、80ものサークル51bqnyfgkhl__sl500_aa300_ 等々、多くの中小企業が見たらひっくり返ってしまいそうです。「日本一社員がしあわせな会社のヘンな”きまり”」(山田昭男著、ぱる出版)にも出ていますが、「見学者は多い(年間5000人)が、ウチの制度を実行したという会社は少ない」と、創業者の山田相談役も言っています。この未来工業の例は、極端なので一部分だけ取り入れようにも、取り入れられないので、「人事制度は全体が大事」なのが良く分かるかと思います。未来工業の制度は「差別化を徹底し、付加価値を高める」ことに全ての制度が繋がっていて、その積み重ねの結果なのです。

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2012年7月15日 (日)

百七十八話 需給ギャップ

 リクルートワークス研究所の調査では、来春の大卒の就職希望者数が、1000人以上規模の企業と1000人未満で久々に逆転をします。1000人以上が21.3万人、1000人未満が22.2万人で、逆転は14年ぶりとなります。このことは、大手と中小との需給ギャップ、いわゆるミスマッチの解消が進んでいることを意味します。ですが、中小はいぜん求人難です。ましにはなりましたが、まだまだ大卒は大手指向です。求人状況を示す求人倍率で見ますと、500人以上の企業は0.6倍、300人未満だと3.27倍です。0.6というの学生1人に対して、雇う企業が0.6社ということです。就職難というのは、大手のことであって、やはり、中小は慢性的に人材難なのです。

Photoィレンツェのウフィツィ美術館にはダビンチ、ミケランジェロ、ラファエロ、ボッティチェッリなど教科書に出てくる名画が揃っています。さすがに予約しないと入れないというので、予約料は掛かりますが早くにネットでしておきまし た。便利になったものです。見るのに半日掛かるような作品点数で、ほとんどルネッサンス期とそれ以前の宗教画です。一定レベル以上の美術品がごろごろあるに圧倒されますが、でも優れた作品というのは、誰もが知っている作家のものなのです。それは、やはり上述の作家くらいの少数でしかありません。日本でも同じですが、知られている優れた作品とそれ以外との差はとても大きいのです。

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2012年7月 8日 (日)

百七十七話 40歳定年制

 野田首相諮問の国家戦略会議の分科会が、フロンティア構想として報告書をまとめました。その柱となる雇用分野の中で、「40歳定年制」を掲げています。年金支給とのからみで定年年齢を延ばし、いよいよ定年65歳かといわれる中で、物議をかもしそうな、なかなか思い切った提案です。定年の延長は日本だけでなく、欧州も同様のジレンマです。年金支給を延長すれば、穴埋めに定年を延ばさざるを得ない、定年が延びれば企業は若年雇用を抑え、若年失業者が増える、それがまた年金の財源を悪化させる、というわけです。日本は、そのような呪縛のない新興国にことごとく負けてしまう、したがって雇用の流動化をはかり、成長分野へ人材を活用できるようにするというようなことが報告書の主旨のようです。「雇用の流動化」だけなら、英米のように「定年制の廃止」としそうなものですが、どうやら、「40歳定年制」としたところがミソというわけです。
 「40歳定年制」が「日本が坂を転げ落ちる」のを止めるかどうかは兎も角、企業の選択肢を増やすのは事実でしょう。弊著「やっぱり人事が大事!」の最終章でも触れていますが、早期定年制が相応しい業態があるわけですから、「40歳定年制」を前提にしたビジネスモデルも出てくることでしょう。あなたが新卒だとして、業種も初任給も同じで、「40歳定年制」の会社と「65歳定年制の会社」があれば、どちらを選ぶでしょうか。「40歳定年制」だと、入社した時から自身のキャリアプラン、ライフプランを考えることとなりそうです。大学等も変わらざるを得ないしょうね。

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