二百十六話 雇用の流動化③
中小企業、とくに中小製造業や卸売り業は、人を選別し即戦力で活用するノウハウも持ち合わせていませんし、これまでそのような立場にもありませんでした。もともと大手企業と違って中途採用中心ですが、それは即戦力という戦略からではなく、そうでないと人材を採れないないからです。 したがって、中途採用し、数年掛けて教育したのち、ようやく戦力とするという人材政策なのです。ある程度の期間は定着して貰わないとなりません。
長きにわたって日本のスタンダードとなって来た、大手企業正社員の定期採用と終身雇用志向のもとで、中小企業はそのような人材政策を取らざるを得なく、それが定着しているのです。逆に言えば、大手企業正社員の定期採用と終身雇用志向のもとで、世界に類稀な日本の層の厚い中小企業の反映があったのだといえます。
もし、雇用の流動化が進むのを止められないなら、中小企業は雇用、賃金、身分階層、教育のあり方を大きく変えなければなりません。これまでは、大手企業の縮小版の発想で構いませんでしたが、これからは独自の人材戦略と制度が必要になります。そうしないと、生き残れません。けれども、そうなるには時間が必要です。
雇用の流動化は、一旦流れ出すと止めどなく加速するに違いありません。対応するには、最低で3年は要るでしょうから、なんとしても予告と猶予期間が欲しいものです。
映画にもなった「プリンセス・トヨトミ」に空堀商店街がでてきます。大阪城の外側の堀が水を入れない空の堀だっ たことから、地名 がついた歴史ある地区で す。大阪に長く暮らしているのに、ほとんど来たことがありま せんでしたが、90歳前になる母が油絵の展覧会をすると言うので、ギャラリーの下見に二度来ました。商店街は堀の上にあたり、面する家屋は堀の底に建っていて商店街の入口は2階という不思議な構造で、今でも石垣が残っていたりします。思わぬことから、大阪再発見ですね。展覧会はまもなく、ご案内を致します。写真左の真中は地下室(つまり堀の底)への階段。
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