二百二十一話 サムスン社員の働き方
これでは日本の家電メーカーはとうてい勝てない、「サムスンで働いてわかった韓国エリートの仕事術」(水田足尊久著、中経出版)を読むとそのような気になります。この本は、日立に10年勤め、その後サムスンに12年勤めた日本人技術者が、サムスンの社員の働き方についてまとめた本です。実情を知ると、驚くことばかりです。日本人の常識がことごとく覆されてしまいます。おそらく、サムスンのような仕事や人事のあり方の会社が日本に存在したら、けっして「良い会社」とは誰も言わないに違いありません。例えば次のようなことです。
同じ研究テーマで社内に二つも三つもプロジェクトが存在する。休憩をしょっちゅうとり、昼食などとる時はチームの全員が揃うまで必ず待っている。短期成果重視。知識偏重、経験を伴わない知識をもとにプレゼンを平気でする。自分で実験、作業することをを嫌う。社長が一番で、製品は二の次。最終顧客や製品開発より、上司を大事にする。なのに、元上司には挨拶もしない。上司から部下への指導は希薄。やたらミーティングが多い。技術者の社会的地位は高くなく、社内も同様。。非現実的な高い目標をたて、違ったらそのときに直せばよいと考えている。社員の目標は競争に勝ち、出世することに尽きる。等々、挙げ出したらきりがないほどです。普通に考えれば、こんな会社がやっていけるはずがないと思うでしょう。欧米のマネジメントの理屈からしても当てはまらないことだらけです。でも、日本はそんな会社にコテンパンにやられているのです。
しかし、よく考えるとすぐにその理由がわかってきます。向こうはバリバリの戦闘モードですが、日本の会社は悠然と行儀よく、和歌に磨きをかけるがごとく、高品質を追求しているようなものだということです。
われわれはこの現実を知っておく必要があります。過大評価も過小評価も間違いです。必要なことは、おそらく自らの強みを再認識すべきということはないでしょうか。そのことを確認できる一冊です。
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