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2014年7月

2014年7月27日 (日)

二百八十三話 ソニーの人事制度改定

 成果主義以降、人事制度の大きなトレンドはありません。今や各社各様の事情で改定、構築が進んでいます。
 ソニーは来年4月に向けて、10年ぶりとなる大幅な人事制度の改定を進めています。業績が低迷し、パナソニックやシャープが黒字化に転じたのに対して出遅れている感が否めないのですが、その要因の一つに社員の高齢化があります。4割とされる管理職比率はやはりかなり高いといえます。したがって、今回の改定は年功の完全払拭、若手の早期登用による活性化が一番のねらいのようです。
 制度としてはジョブグレード制により、実績や期待ではなく、「現在の役割に基づく賃金」を徹底するとしています。おそらく、、「役割に基づく賃金」といっても、職務の積み上げではなく、職務の総体としての役割で等級を決め、その等級のレンジ(水準の幅)内で賃金を決める方法をとると思われます。それでも、「役割に基づく賃金」を進めるということは、そのときに就いた役割により賃金が上下することになると考えられ、役割機会のマイナス面が懸念されるところです。そのデメリット回避のために、自分のやりたい仕事に手を上げる、「社内募集制度」も同時に立ち上げることとなっています。
 これらの新制度の概要からは、今のところ、とくだん目新しいしくみはなく、もう一つソニーらしさが感じられません。いずれにしても、アップルとも、GEとも、ましてサムスンとも違うのですから、どのような会社を目指すのか、短期の業績やトレンドに振り回されず、独自のたビジョンと一体となったソニーならではの人事制度を構築して欲しいものです。今、伝わってくる人事制度からだと、少し心配になってしまいます。

 ハリウッド流に焼き直した日本映画は、これまで思うようにヒットしていなかったと思います。米国流の最大公約数をとってキャラクターを作り変える手法などは失敗でした。日本の映画やアニメの面白さは独特のオタPhotoク型の世界感にあるといえます。ハリウッドもようやくそのことに気が付きはじめたようです。渡辺謙が主演するアメリカ版ゴジラの最新作は、ゴジラが限りなくオリジナルに近くなっただけでなく、ストーリーもまるで日本映画のそれです。お蔭で世界中でヒットしているようですが、当然といえば当然なのですが。

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2014年7月21日 (月)

二百八十二話 すかいらーくの成果型賃金

 すかいらーくが来春に成果型賃金に移行します。7つの階層を持つ、ボックス型賃金で賃金体系そのものは特に目新しいものではありません。むしろ、今までが160段階にも分かれていた年功型の賃金だったのが不思議なくらいです。
新制度で特に特徴的といえば、同じ階層でも評価によって賃金が上下するしくみです。月例給を上下するには、評価基準が明確であることと公平さが求められます。そうでないと、デメリットばかりが目立つことになるでしょう。ということは、業績がはっきりしている店長クラス以上をターゲットにおいていると考えられます。スタッフの中から優秀な者を店長に昇格させ、優秀な店長の給与水準をボックスの上位へ、また上位階層へ昇格処遇することをスピーディに行うのがねらいの一つでしょう。系列店を含むと2600店を持ちますから、店舗も序列があり、差は大きいと思われます。手続きが透明化され、優秀な店長は優良且つ業績責任の重い店舗に就けることになれば、モチベーションも上がります。
 デフレ下の成果型賃金は賃金抑制が狙いでしたが、すかいらーくの取組みは優秀でやる気があれば、高い昇給と早い昇格で処遇しよとするものです。いわば、デフレ解消下の成果型賃金ですが、他社へも広がるでしょうか。

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2014年7月13日 (日)

二百八十一話 プロダクトアウト

 ソニーがウォークマンを発売したのは、1979年です。まったく新しい画期的なカテゴリーを世の中に送り出したわけですが、それ以来家電関連分野では、日本初のプロダクトアウトは目にしていないように思います。ニーズが多様化したのは間違いありませんし、製造拠点が海外に移ったのも事実でしょうが、アップルはIphoneによって、これまでにないスマートフォンというカテゴリーを創出し、あっという間に累計5億台の誰もが使うツールとしてしまいました。明らかに、のっかり商品のサムスン・ギャラクシーなども1億台を超え、巨大な市場を創出したわけです。新しいカテゴリー、市場の創出ばかりがビジネスではないでしょうし、大きなリスクを背負うのは賢いビジネスではないのかもしれませんが、日本にはそれだけの潜在力があるだけに、寂しい気になります。
 トムクルーズ主演の最新作「オールユーニードイズキル」にアーマースーツが出てきます。エイリアンと戦うために人の力とスピードを何倍にもする近未来の戦闘型ロボットスーツですPhotoが、この映画の原作も日本のノベルで、アーマースーツも原作では日本製です。軍事用はともかく、ロボットスーツは介護や障害補助器具として技術では日本が先行しています。ロボットスーツもドイツや米国に市場を先行され、韓国や中国に量産化される前に、なんとかモノにして欲しいものです。
 ノベルやアニメにあるように日本にはいろいろな分野にアイデアがまだまだ眠っています。プロダクトアウトを忘れた大手に代わって、チャレンジするベンチャーが出てきてくれるのでしょうか。

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2014年7月 6日 (日)

二百八十話 伝える技術

 自分が感じていることや思いを他人に伝えるのは難しいものです。この仕事で会社を外から見る立場にいると、「伝える」というのは、人が集まってなにがしかを成す会社という組織の永遠の課題のように感じてしまいます。

 特に興味があるわけではなiいし、そもそもよく知らなかったのですが、家内が面白いというので、梅田阪急で開催されていたアニメ映画「エヴァンゲリオン」の原画展に丁度ついでがあったので寄ってきました。圧倒的な支持者のファンを持つ、難解でオタクの極みのようなアニメですが、作成過程の設定コンセプトの原画等を見て驚きました。
 アニメの作成というのは、1秒間に数十枚の画像をつなげて行く、いわば時間を作って行くような作業なのですが、手描きであろうがCGだろうが、膨大な量なので当然スタッフで分担して作ります。したがって、制作者や監督は画面のイメージをしっかり作画スタッフ等に伝えないとなりません。各シーンの映像のもとになる、その原画があるのですが、ふつうはラフにイメージを描いているものです。
 ところが、この映画ではその原画がもの凄いのです。街が破壊されるシーンで、よく見ると信号機の電柱に止めてある鋲まで描いてあったり、襲ってくる洪水の細かな何百という波紋まで描いてあり、添え書きに「こんな風に」としてあります、あるいは、エヴァンゲリオンを運ぶ輸送機の絵の横に大きさを示すためにJRの列車が1両小さく3センチくらいに描いてあったりするのですが、それが詳細に実に魅力的に描かれているのです。大きさを示すだけなら、列車の絵など適当でいいはずなのでしょうが。
 これらを見て、昔、仕事の関係で東京ディズニーランドをつくるときのシンデレラ城の図面を見たときのことを思い出しました。単なる建設のための無機的な設計図ではなく、それは図面自体が作品のように魅力的なものでした。図面通りつくるだけなら、普通の設計図で充分なはずなのですが。
 つまりこれらのことは、制作者や監督のイメージや思いを実際に現場で作業する人たちに伝えることとは、こういうことなのだとよく教えてくれているように思います。何かを任せるときに、必要な情報を正確に伝えることが最低限しなければならないことですが、それだけではなく、同じ思いで「その気にさせる」ことが必要ということなのでしょう。まずは、伝える相手をファンにするくらいワクワクするような魅力的なものや話にしないと、本当に大切なことは伝わらないようです。とても参考になりました。

 

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