二百八十話 伝える技術
自分が感じていることや思いを他人に伝えるのは難しいものです。この仕事で会社を外から見る立場にいると、「伝える」というのは、人が集まってなにがしかを成す会社という組織の永遠の課題のように感じてしまいます。
特に興味があるわけではなiいし、そもそもよく知らなかったのですが、家内が面白いというので、梅田阪急で開催されていたアニメ映画「エヴァンゲリオン」の原画展に丁度ついでがあったので寄ってきました。圧倒的な支持者のファンを持つ、難解でオタクの極みのようなアニメですが、作成過程の設定コンセプトの原画等を見て驚きました。
アニメの作成というのは、1秒間に数十枚の画像をつなげて行く、いわば時間を作って行くような作業なのですが、手描きであろうがCGだろうが、膨大な量なので当然スタッフで分担して作ります。したがって、制作者や監督は画面のイメージをしっかり作画スタッフ等に伝えないとなりません。各シーンの映像のもとになる、その原画があるのですが、ふつうはラフにイメージを描いているものです。
ところが、この映画ではその原画がもの凄いのです。街が破壊されるシーンで、よく見ると信号機の電柱に止めてある鋲まで描いてあったり、襲ってくる洪水の細かな何百という波紋まで描いてあり、添え書きに「こんな風に」としてあります、あるいは、エヴァンゲリオンを運ぶ輸送機の絵の横に大きさを示すためにJRの列車が1両小さく3センチくらいに描いてあったりするのですが、それが詳細に実に魅力的に描かれているのです。大きさを示すだけなら、列車の絵など適当でいいはずなのでしょうが。
これらを見て、昔、仕事の関係で東京ディズニーランドをつくるときのシンデレラ城の図面を見たときのことを思い出しました。単なる建設のための無機的な設計図ではなく、それは図面自体が作品のように魅力的なものでした。図面通りつくるだけなら、普通の設計図で充分なはずなのですが。
つまりこれらのことは、制作者や監督のイメージや思いを実際に現場で作業する人たちに伝えることとは、こういうことなのだとよく教えてくれているように思います。何かを任せるときに、必要な情報を正確に伝えることが最低限しなければならないことですが、それだけではなく、同じ思いで「その気にさせる」ことが必要ということなのでしょう。まずは、伝える相手をファンにするくらいワクワクするような魅力的なものや話にしないと、本当に大切なことは伝わらないようです。とても参考になりました。
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