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2014年11月

2014年11月30日 (日)

二百九十一話 外人雇用

 外国人が日本で働くには,4つの方法が基本の枠組みです。一つは、「専門職」で、プロのスポーツ選手がわかりやすい代表例です。他に国際業務や専門技術で在留資格をもつ場合と投資・経営などで在留する場合とがあり、現在20万人超が滞在していて最も人数が多い層になっています。政府はこの「専門職」を一番増やしたい方針です。二つ目は、「留学生」で2番目に多くなっています。これも増やす方針ではありますが、本業は学生ですので週に28時間しか働けません。3つ目は「外国人技能研修生」で15万人働いていており、7割が中国人です。また、職種は製造、建設、農業に限られます。現在研修期間は3年ですが、これから5年に伸び、介護と林業が加わる予定です。技能研修となっていますが、使う側の実態は不足する作業員の補充と人件費の抑制です。期間が5年になると、言葉の問題がかなり解消されるでしょうから、中小企業などは利用しやすくなるはずです。4つ目は「日系人で」、ここは職種の制限はありません。
 これだけ人不足だと、外人雇用も選択肢の一つにせざる得ないでしょう。今のところ、単純労働だと実質は「研修生」と「日系人」となります。経験のない中小企業に向いているのは、専門機関を介する「研修生」で、無難といえそうです。

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2014年11月25日 (火)

二百九十話 少人数企業の雇用動向

 日本政策金融公庫によると、20人未満の中小企業およそ6000社の7~9月調査で約3割が人手不足の回答で、サービス業以外はすべての業種で昨年同期よりもその度合いは上昇しています。とくに厳しいのが、情報通信業49.4%、 運輸業43.3、建設業42.6となっていて、製造業が18.1ですから業種別の偏りは非常に大きいといえます。
 賃金水準は一年前と比べて上がった企業が21.0%、なかでも、やはり情報通信業が32.6%と最も割合が多く、次いで製造業(24.2%)、建設業(24.1%)となっています。そのうち65.8%が人材の定着・確保によるとしています。
 情報通信業、 運輸業、建設業はもともと人不足だったところへ、景気回復で拍車がかかることとなりました。特に技術職が足りません、しかし、解決する抜本的な手立てがないのです。とくに少人数の企業はさらに難しくなりそうです。
 一方で製造業の賃金の上昇は、大手や規模の大きい企業の影響を受けていると思われます。そのうえに円安で材料費が高騰しているにもかかわらず、まだ売価に転嫁できていないところは、仕事はあるものの利益確保の点では厳しい状況に拍車をかけている可能性があります。機会喪失、人件費の上昇、材料高と経営環境は良くありません。
 この規模の企業が儲からないと、日本は景気の回復を広く実感できそうにありません。大手の好業績がこのクラスにまわるまではまだ時間が掛かりそうです。

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2014年11月16日 (日)

二百八十九話 億の買い物

 ラジオでバイオリンニストの千住真理子さんが、ストラディヴァリウス購入の秘話を語っていて、余りにもその奇妙な話に、母親の千住文子さんが書いた「千住家にストラディヴァリウスが来た日」を早速、購入しました。内容は、末娘の真理子さんへの一家の心温まる応援歌なのですが、わたしは、けっして大金持ちではない慎ましやかな芸術一家が億単位のPhoto買い物をする決断とその方法に非常に興味を持って読みました。
 名器ストラディヴァリウスは未だに解き明かされていないその音色と数が限られていて減る一方なのとで高価であり、プロなら一度は弾いてみたい、所有したいバイオリンです。
中でも千住家が手に入れた「デュランティ」は、ローマ教皇クレメンス14世に捧げられ、逝去後は側近、フランス貴族、スイスの大富豪へと渡り歩き、300年間弾かれずに眠っていた幻の逸品です。それが大富豪の遺言で売りに出され、世界の5人の著名バイオリンニストに購入する権利が渡されます。
 そこから運命の物語が始まります。千住真理子さんは4番目でしたが、1,2番はそれぞれの事情でスルーし、3番目はパトロンがついているバイオリンニストで、「決定間違いなし」です。逆にほっとしていたら、そのパトロンが欲を出し、即金で払うからと値切ったせいで「デュランティ」を所持するに相応しくないとなり、とうとう真理子さんのもとに届いてしまいます。顧問の会計士からも「今、こんな買い物をすれば、千住家は破綻します」と言われていたし、購入などとんでもないと思っていましたが、コンサートで試し弾きできることとなります。実際に弾いてみるとたちまちその魅力に一家は憑りつかれてしまい、そこから会計士まで巻き込んで、金策に奔走することに。
 そのような話なのですが、驚くのは普通の家庭で億単位の買い物ができるということです。詳細は書かれていませんが、おそらく生保やらを使ったり、家や土地を担保にしたことでしょう。でも大きな要因はやはり比類ない高額な名器であるがゆえのようにも思われます。ストラディヴァリウスにまつわる逸話が多い所以です。

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2014年11月 9日 (日)

二百八十八話 同一労働同一賃金

 民主党や維新の党など野党4党が「同一労働・同一賃金」を推進するための法案を今国会に提出しましたが、どうもピンときません。非正規の待遇改善に成功したオランダの例などを念頭にしているのでしょうが、オランダなどは「同一職務・同一賃金」で、職務給が中心の欧米はもともと明確な職務概念が形成されている上でのことです。日本にはそのような職務概念がなく、現実には仕事に基づく雇用契約をする意識が労使ともに希薄です。よって同一労働とは何を指すのか、明確になるとはとうてい思えません。
 そもそも企業の方は、定型業務が中心の役割は正社員に任せたくないのです。そこは非正規に任せて、正社員は非定型の判断業務や監督業務を任せたいのです。すると「同一労働・同一賃金」の推進は非正規の待遇改善に向かわず、二層化を進めるだけとなります。
 また企業が賃金を高く払っても良いと思っているのは、定型中心の役割では、仕事そのものというより、実際にはどれだけ融通が利くかなのです。とくに中小企業はそうなのです。したがって融通度が限定される働き方とそうでない働き方とは差がついて当然となるわけです。
 その役割は欠かせないが、担う人材が少ないというなら、それだけの賃金を企業は払います。したがって国が整えるべきは、どのような仕事がどれくらい貰えるかをわかるようにすることなのですが、欧米式の職務という括りではなく、働き方も含めて企業が実際に求めている仕事の要所をきちっと伝えることができるしくみといえます。

写真は神戸アンパンマンミュージアムのあんパンなどのセット。
家内が贈答用に買ってきたものですが、勿体なくて食べれないですね。
Photo


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2014年11月 3日 (月)

二百八十七話 暇で儲けるしくみ

 弊グループ会計事務所の顧問先にも、かつては印刷会社が沢山ありました。とにかく印刷の機械を置けば儲かるという時代だったようです。それが、タイプライヤーがワープロになり、次にパソコンなり、やがてネットの時代になるにつれ、次第に減少していきました。今残っているところは、印刷にしかできない分野で特化し、品質とサービスを高め、良い得意先を確保できているところがほとんどです。印刷が完全になくなることはないので、我慢と努力で残った会社は強いのですが、スマフォやタブレットを含めたパソコンの浸食スピードは速く、まだまだ厳しいようです。
 そのような業界ですから、どこでも機械の空き時間が増えています。ところが、その空き時間を使って、儲けている印刷会社が東京港区にあります。ラクスルという会社で、全国の稼動していない印刷機械をまとめて一つの印刷工場のように使っているのです。ラクスルによると印刷機はだいたい50%は動いていないらしいので、それを使うと、安価なうえに少量生産にも対応できるというわけです。名刺印刷が両面カラー100枚で市況の1/3程度の500円ですから破格です。しかも、ラクスルだけが儲けているのではなく、全国の機械の空いている印刷会社が助かるのです。
 まさに発想力と実現力のたまものですが、ネットと宅配社会の典型のビジネスモデルといえます。浸食する敵を逆に利用するのも、成功しているビジネスモデルの一つのパターンの気がします。

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