二百四十三話 電子立国はなぜ凋落したか
日本の電子産業の生産金額は今や2000年ピーク時26兆円の半分以下です。かつてあれほど電子立国とまで讃えられた日本の電子産業がなぜここまで凋落してしまったか、その疑問に「電子立国は、なぜ凋落したか」(西村吉雄著、日経BP社)が一つの答えを教えてくれています。結論から言えば、日本大手メーカーの垂直統合型の体制が、アップルや鴻海、LG、小米などのEMSというグローバルな水平分業型企業に敗れた、というかなれなかったからと、この本は書いています。EMSというのは、直訳すると電子製品の「製造サービス業」で、あくまで「製造業」に拘った、パナソニック、日立、東芝、シャープ、ソニー、NEC等が敗れたという訳です。
もしそうだとすると、現在も何ら変わっていないわけで、日本の凋落は止まらないことになります。ではなぜ、垂直統合型から変われないのかですが、この本では成功体験や「製造業」という固定観念、プライドとしています。そこには、なにか「サービス業」を低位に見ている体質があります。この大きく変化する時代にそれでは勝てないでしょう。
わたしは、それに加えて日本の人事制度も大きく影響していると思っています。「製造業」が「企画・設計」と「製造」を切り離すことができないのは、「雇用の流動化」があまりにもなさ過ぎるからというのが下地としてあるように思います。でも、この「雇用の流動化」も定期採用、定昇、終身雇用、年功処遇、総合職メイン制、社内組合と、これらがセットでがっちり噛み合っていて、簡単には進みそうにありません。電子産業に限れば、当面日本は部品産業で存在感を高めるしかなさそうです。
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