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2016年1月

2016年1月31日 (日)

二百五十一話 同一労働同一賃金②

 同一労働も同一労働価値も何が「同一」なのか、曖昧にしています。まずは仕事(職務)なのか労働力(職能)なのかですが、厚労省などが進めているのは労働力(職能)による社会的な基準づくりです。職種別職能基準で、これまで社内にとどまっていた職能基準を一般化しようというものです。ですが、賃金とリンクさせていないため、あまり役に立つものとなっていません。様子を見ながらというところでしょう。
 とりあえず日本はおそらく同一労働力同一賃金の考え方が向いているのだと思いますが、いずれにせよ職務や職能の区分、レベリングをどのようにするかが問題なのではありません。そこをどうするかに焦点をあてた解説や議論もありますが、それほど重要なことではありあせん。問題は同一職務や同一職能と言った場合に、職務や職能になにをプラスして入れるかです。具体的にいうと、勤続、年齢、学歴、性別、国籍等の属性やワークスタイルなどをいれるかどうかなのです(勿論、性別や国籍は違法です)。その意味では、職能型は勤続、学歴と相性が良いでしょう。職務型も欧州は学歴主義が濃いです。日本では年齢が考慮されても違和感はありませんが、米国では違法となります。但し、米国でも勤続は考慮されます。
 仕事に対して公平、能力に対して公平な賃金の観点からは、属性を入れれば入れるほど遠ざかります。でも、海外の職務給型をとっても純粋に職務だけというような国はありません。また、ある程度属性を入れることで雇用の流動化を薄めることができます。
 同一職務同一賃金の最も明確な国は米国です。職務に対して最も公平であり、合理的な賃金コンセンサスが出来上がっています。ただし、その代償として製造業が衰退してしまいました。製造業の就業人口は右肩下がりですし中小製造業は育たなくなりました。同一労働同一賃金は国のかたちを決める重要な問題なのです。正しい議論が望まれます。

ニュースで食品博を見ていたら、一つのブースにお客が列をなしていました。そのブースが軽井沢に本店のある丸山珈琲で、フレンチプレスの珈琲に列をなしていたわけです。どんなものかと東京の西麻布店に行きま1したら、確かに美味しい。でも、これまで飲んでいたドリップ珈琲とは別物というのが正解に思います。ブルーボトルは日本のドリップ式を逆輸入しましたが、海外で一般的なフレンチプレスが日本で洗練されて米国あたりへ逆上陸するかもしれませんね。

拙著「人を使うのが上手なリーダーのワザ」に台湾の出版社から中国語に翻訳し出版したい旨のオファーがあPhotoりました。嬉しいことです。人を動かす基本の基本がフィットしたのでしょうか。ぜひ出版となり、売れて欲しいですね。

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2016年1月24日 (日)

二百五十話 同一労働同一賃金①

 安倍首相が同一労働同一賃金の実現の方針を掲げたためもあって、にわかに賃金政策に関連する論調が増えてきました。正社員と非正規との格差の是正がその主眼です。でも、どう具体的に実現しようというのかは全くわかっていません。そもそも、われわれ専門家からすれば非常に複雑なメカニズムが働く問題で、方向を間違うととんでもないことが起こりかねないのです。日本の国力にかかわるテーマに触れる問題であり、熟慮と社会的コンセンサスを必要とし、時間を掛けなければいけない難題なのです。
 同一賃金というのは、解釈がほぼ定まっています。つまり、時間当たり賃金のことで、同じような労働をしていても、正規と非正規で時間当たり賃金には大きな差があるという訳です。その通りですが、問題は「同じような労働」つまり「同一労働」をどうとらえるかです。民主党や連合、経団連は「同一価値賃金」といっていますが、それぞれ思惑があって中身が異なります。
 連合、経団連が土俵にしている、日本の主流の賃金は職能給の考え方です。あえていえば、日本社会は職能給型社会です。労働市場は職能給の考え方をベースとしています。それに対して、日本以外の国はほぼ職務給型社会です。日本にも職務給型の労働市場はあります。医療や派遣業界がそうですが、主流ではありません。職能給と職務給の違いは、職能給は人に値段をつけますが、職務給は仕事に値段がついているのです。この違いはとても大きいのです。しかも、日本人にはこの「仕事に値段がついている」感覚がピンときません。
 同一労働同一賃金の究極は同一職務同一賃金です。仕事に対して公平な賃金です。でも、そのような社会を連合も経団連も望んではいないはずです。なぜなら、正社員の賃金を守れないからですし、経団連の主流である製造業に向いていないからです。
 もし日本が諸外国のように職務給型社会になるとどうなるかですが、一番の問題は雇用が流動化することです。その証拠に職務給型の医療や派遣業界は雇用が流動化しています。雇用の流動化は、ある程度必要で産業構造が変わるときには特にそうなのですが、副作用も大きいのです。医療や派遣業界のように社会全体で雇用が急速に流動化すれば、下請け型の中小製造業はほとんど潰れてしまうでしょう。ですから、賃金の問題は慎重に選択しないとならないのです。 このような複雑なメカニズムは専門家でないとわかりません。専門家がリードすべき問題で、もっとしっかりと主張すべきです。

列島がすっかり冷凍庫になってしまいました。ベランダにあるメダカの鉢を見ると、この冬はじめて凍っています。お蔭で外へ出ることなく、仕事が捗っています。冬は寒い方が景気には良いのでしょうが、交通機関が混Photo乱するのが困りものです。とくにJRはえらいことになります。月曜の朝にダイヤが出鱈目になると、疲れが倍増ですね.。

関与先の高石工業さんが1月13日(水)日経新聞夕刊(関西版)11面に「水素ステーション 関西の技で」という記事で、水素ステーションの開発に携わる関西の4社の一つとして載っていました。ゴムパッキンの老舗優良企業ですが、水素が漏れず、劣化せずの技術が評価されたとのことです。凄いですね。

 


 

 

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2016年1月17日 (日)

二百四十九話 人材の底上げ①

 中小企業の教育は時間に余裕がないとままなりません。景気が上向き、本当に忙しいときは教育どころではなくなるのが実際です。したがって、人材育成についてはどうしても場当たり的になってしまうのは、ある程度仕方ないことといえます。それでも、教育に力を入れようというところが増えて来ています。とくに基礎的なことは、「このレベルなら必須」というように最低限のことを学ばせる教育をある程度定期実施しようという相談が多くなりました。教育は他社との差別化につながることの再認識がはじまっています。教育をしくみとして取り入れ、育成をはかっている会社とやっていない会社との差がはっきりしてきたわけです。優れた社長さんが引っ張るだけではもはや勝てなくなってきたといえます。
 ところで、社員の教育には、「引っ張っていくようなできる人をより伸ばす」やり方と「底辺を引きあげる」やり方の二つがあります。どちらも必要なのですが、両方を取り組む余裕がないのが普通です。状況や業態にもよるでしょうが、一般的には後者の底上げ型から取り組むのが良いように思います。ある程度できる人は、放っておいても伸びるからです。自ら学ぼうとしない人は、放っておくとそのままです。しかも。できない人は足を引っ張ったり、周囲に良い影響を与えないことが多いのです。ただし、底上げの教育をしてもたいていは全員がレベルアップするわけではありません。そうは上手く行かないのですが、たとえば同僚が少し伸びたりして変わり始めると、本人も焦りだします。僅かでも伸びた人が出てくる、会社もそこまでは教育を何とか続けないとなりません。

16日の朝日新聞のコラムに孤立と孤独のことが載っていました。「日本人は特に外では一人で食事をするのを嫌う。レストランで一人で食事をしているのを見たことがない。それに対してフランスだと高級なレストランでも一人で食事をしている人は結構いて、普通だ。しかPhotoもおいしそうに食べている。」というのです。確かに日本だと周囲も本人も侘しく感じてしまいます。この筆者はパリのレストランで牡蠣と白ワイン、黒パンで美味しそうに食べている老人を見て、孤立はしていても孤独ではないのだろうと書いています。日本でも「個の確立」は進んだとは思いますが、「個が確立した大人の社会」はまだ大分先のように感じます。(写真はいつ使うか迷ってしまう、クローバー石鹸さんのお馴染み干支石鹸)

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2016年1月11日 (月)

二百四十八話 最低賃金1000円

 ニッセイ基礎研究所によると、97年をピークに2014年まで、一人あたりの平均賃金(支給総額)は緩やかに減少し、97年の36.0万円から14年の31.7万円と△12.1%も下がっているとしています。しかし、雇用形態別に見ると実は正規社員で1.5%、パート社員で4.3%上昇しているのですが、この原因はパート比率が、15.6%から29.8%とおよそ2倍にハネ上がったからに他なりません。また、97年から14年のこの間、企業の業績は経常利益で見ると、36.7兆円から65.8兆円と大きく増加しています。つまり、長いデフレ下にあって企業はリスク回避策として、パート社員を増やし業績を確保してきたというわけです。したがって、それをそろそろ、社員に還元し平均賃金を上げ、デフレを脱するべき時期にあるというのが政府の考えのようです。ということは、パートの時給を上げるということで、最低賃金1000円を目指すという理屈です。
 このような流れにあって、パートの人海戦術に頼ってきたような中小企業の多くは、方針を見直さなければならないでしょう。中小企業としては率先して売価を上げるわけにはいかないとすると、機械化ややり方の見直しでより一層生産性を上げ、付加価値を高めるしかありません。頭の痛いことですが、今年はそのような決断を迫られる年になりそうです。

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2016年1月 3日 (日)

二百四十七話 景気の材料と賃上

 大手企業は好業績ですが、中小企業はそれほど良くありません。消費が今一つ、インバウンド効果は一部に留まっている、人不足、人件費の上昇、円安原料高、管理コスト上昇、極めて不安定世界情勢などマイナス材料には事欠きませんが、足元での良い材料は見つけにくくなっています。政府はアベノミクス成功のために今年の賃上を何としてでも昨年並み、もしくは以上に持っていきたいところですが、先行き不透明の中、企業は慎重です。とくに中小企業はそうです。たとえ大手が昨年並み0.5%のベアを実施しても、中小はついていかないでしょう。けれども、少し長い目で見れば近年には無く、好材料は揃っているように思われます。
 三つのバズーカといわれる、東京オリンピック、インバウンド、TPPはこれから本格化するでしょうし、IoT、フィンテックは今年確実に成果を上げそうです。ドローン、自動運転、人工知能、ロボット、クラウドファンディング、0円決済など、アイデア段階だった技術革新が一気に実用化段階に入りそうです。当然、その恩恵は大手中心になるでしょうが、すぐに中小まで裾野は拡がるはずです。
 そう考えれば今年は悪くはなさそうですが、中小の賃上のブレイクはなさそうです。あっても昨年上がった初任給の調整、あるいは人が採りにくい職種などの調整くらいでしょう。当面は業績が上がれば賞与、次に査定昇給で、そのかたちが定着しています。中小にとってのベアは世間相場との乖離ですから、全体を底上げするような大きな賃上はしばらくは起こらないと思われます。

初詣は天照皇大神と素戔嗚尊をまつる近所の弓弦羽神社(ゆずるは)へ。例年Photoは参拝客3がちらほらの閑静な神社なのですが、今年はスケートの羽生結弦選手のお蔭でどっと人が押し寄せるとかの噂で早朝4に参って来ました。昼間は噂通り参拝客が列をなしていたようですが、早朝は意外に数人程度でゆっくりお参りできました。それにしても、この神社は、サッカーのときは八咫烏のお守り、今度は名前つながりで羽生選手を引き寄せるなど力があります。もちろん羽生選手の活躍はご利益のお蔭でしょう。肖りたいものです。

 

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