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2016年6月

2016年6月30日 (木)

二百七十二話 英国の投票結果の日

 先週の24日、世界最大の投資運用会社であるブラックロックの投資担当者に、激動する世界情勢について講演をしていただきました。奇しくも、英国のEU残留か離脱かが決定する日と重なったのですが、講演が始まった15:00にはすでに決着がついていて、どのような話が聞けるのか、参加の皆さんは興味津々だったようです。
 ブラックロックも日興証券の担当者も、朝にはやはり残留優勢のニュースを聞いて思惑どおりで安心していたと言っていましたから、まったく想定外の結果だったということです。
 ただ、ブラックロックは残留と離脱の両方の場合の綿密なシナリオを準備していたようです。まあ、相当なデーターを駆使してのシミュレーションを重ねたのでしょう。翌日のNHK特集にもそのことが紹介されていました。
 ブラックロックの話では、世界は低成長・低インフレ・低金利、格差の拡大(=お金のだぶつき)、自国主義が進んでいて、ちょっとした事件がきっかけで金融、株式市場は大きく揺らぐとのことです。したがって、世界中の債券や株式へのプロによる分散投資のファンドが有効で、相場が下がれば買いだといい、そろそろ近いというのです。 また、NHK特集でも、ジョージソロスがまた市場に戻ってきたとのことで、市場が落ち込む前に動き出すソロスが現れたことに良くない兆候と伝えていました。
 現在はひとまず落ち着きを取り戻したようで、ブラックロックやソロスの意に反して、このまま何もなく平常に戻って欲しいものです。日本にとっての一番の心配はやはり急な円高です。祈るばかりですね。

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2016年6月23日 (木)

二百七十一話 賃金のハイブリッド

 日本生産性本部による上場企業対象の調査(2013)で、職能給の導入率が管理職で69.2%、非管理職で77.3%、職務給・役割給の導入率が管理職で79.2%、非管理職で58.4%となっています。この調査で職能給と職務給・役割給の両方の率を足すと100%を超えてしまうのは両方の賃金制度を導入している企業があるからですが、これをハイブリッド型賃金と呼んだりします。また、管理職と非管理職とで率が異なるのは、非管理職までは職能給、管理職以降は役割給に変えるなどしているからです。
 ハイブリッド型賃金は、能力主義賃金から仕事給型賃金への「過渡的なもの」ともいえるでしょうが、むしろ、それぞれの賃金の長所を活かすという「積極的な採用」の面が強いと思われます。すなわち、非管理職層についてはポテンシャルも含めた能力向上がやはり大切で、賃金は生活給にウェイトを置いた積上げ安定型の職能給が適合するというもの。また、管理職層については培った能力を発揮し成果重視型で、賃金は一定水準以上あることから、どのような仕事に就き、どのような成果を上げたかで変動する職務給・役割給がフィットするというものです。
 では、中小企業でどうかといえば、ハイブリッド型賃金の兆候はありません。一番の理由は「制度が複雑になる」からと思われます。だとすると、制度が複雑にさえならなければ、導入が拡がる可能性はあるのかといえば、答えはイエスでしょう。職能給を導入している中小企業で、現在でも管理職についてはその運用を仕事給型にしているという傾向が少なからず見られます。中小企業は名よりも中身が大事なのです。

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2016年6月16日 (木)

二百七十話 人事の用語①

 一般的にいって、賃金や人事がとっつきにくい理由の一つが、「使われる用語がわかりにくい」というものです。しかも、専門家や専門機関、企業等によっても意味、定義がまちまちだったりします。
 たとえば、「賃金」といえば、一般には月例給と賞与を含めていいますが、労働組合などでは賞与を除いた月例賃金のことを指すことが多いのです。これでは、はなしが通じなかったり、まったく違うものになりかねません。そこでときおり、用語の定義の解説を挿みたいと思います。
 来月あたりに、厚労省から今年の春闘の賃上げ結果が発表されるでしょうから、まず初めにややこしい「定昇」をとりあげておきます。「定昇」などは、ほんの数年前までは新聞等でも定義がバラバラでなんだかよくわからなかりませんでした。このところはだいぶ整ってきて、現在はほとんどのマスコミにおいて、「毎年(つまり、定期に)、原則全員対象にルールに則って行う昇給」という意味で概ね使われているはずです(それでも、企業や労組によって多少違いがありますが。)。そうすると、手当の増額や昇格・昇進時の昇給などは、不定期、随時で特定の人が対象ですから、定昇外昇給となるわけです。このことは、「わが社の定昇率は世間水準と比べてどのようなものか」といった場合に重要になります。自社の定昇率、定昇額をどのように定義しても構わないでしょうが、「定昇」に何が含まれ、何が含まれないか、世間一般の扱いを知っておくべきといえます。

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2016年6月 9日 (木)

二百六十九話 職務限定正社員

 少し前に地域限定正社員が話題になりましたが、このところ職務限定正社員制度なるものを設ける企業が増えています。従来は総合職に対して一般職と呼んでいた職群がこれにあたるといえますが、現在とりあげられているものは、パート社員から正社員にするための受け皿としてのものです。
 有期契約のパート社員を無期に転換した場合に、人不足のための囲い込みにはなりますが、総合職正社員にしたのでは担当する仕事に対して給与のバランスがとれません。パート社員のときと大きく給与を変えないで引き続き同様の仕事をしてもらい、長く雇用するには、職務を限定した正社員が向いています。同一労働同一賃金推進法制により総合職身分でありながら給与だけ低いというわけにはいきません。総合職に対して、給与はやや劣りますが、その分仕事が限定されている職務限定正社員が適切というわけです。この4月から制度を策定しただけで助成金の対象にもなり、導入企業が増加しています。
 このような動向は、非正規から正規へ、また賃金の底上げをはかろうとするものですが、もう一つの流れは、職務の明確化、職務契約型へのシフトです。日本の賃金は少しずつ、動きはじめています。

6月24日(金)15:00よりSMBC日興証券にて特別セミナーを開催します。540兆円もの運用資産を有し、日本株をImg15010兆円保有するといわれる、世界最大手の投資運用会社ブラックロックの資産運用担当者を招いて、激動する最近の世界情勢を解説して頂きます。最近の株価低迷はブラックロックがアベノミクスに見切りをつけたのが一つの要因とかいわれていますが、どのような視点で日本経済や世界を見ているのか、知りたいところです。

 

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2016年6月 2日 (木)

二百六十八話 再雇用賃金引下げ違法判決

 最近、関与先で必ず訊かれる話題が表題の件で、賃金では最近でもっとも関心が高いといえます。横浜の運送会社の定年後再雇用の運転手3人が仕事が同じなのに賃金が引き下げられたこと(7~8割)に対して訴訟を起したものです。東京地裁は違法判決を出し、定年前と同水準の賃金の支払い(一人当たり98万~204万)を会社に命じました。
 この判例ではポイントが三つあるように思います。一つは、仕事が同じなのに賃金が下がったことが違法としている点です。これを指摘されると、訴訟があれば、ほとんどの中小企業は違法となるでしょう。まだ、地裁段階ですのでこのまま一般化するとは思われませんが、困ったものです。但し、留意すべきは「コスト増大を避けつつ高齢者の雇用を確保するために、再雇用後の賃金を引き下げること自体は合理的」とした上で「仕事内容が同じ場合は較差があってはならない」としている点です。つまり、対応策としては何らかで仕事や責任に違いを設けておくことです。
 二つ目は、60歳以降の高齢者雇用が賃下げの引き換えにならなかった点です。2013年に継続雇用が義務化され、もはや特別ではないというわけです。
 三つ目は、この考えを進めていくと、年齢による賃下げは違法、年齢による格差は違法になっていくことです。ということは、かなり普及している年齢給(2013年生産性本部調査で48%)は違法となりかねないわけです。
 これらを考え合わせると、社会通念からして、この判決は時期尚早に思われますが、流れは徐々に「賃金は仕事の対価」という「仕事基準」に傾斜しつつあります。

長く関わらして頂いています会社の創業80周年の記念に、弊社の名前の入った記念プレートを頂戴しました。厚いPhoto鉄板がレーザーで精密にカットされています。凄い技術ですが、わたしが知っている間でも技術革新、最新設備の導入、増強は何度もされています。まさしく伝統を守るだけでは、80年は積み上がらないことを証明されています。

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