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2016年10月

2016年10月31日 (月)

二百八十七話 中小企業の四重苦

 景気の指標が悪い中、9月の完全失業率は3.0%、有効求人倍率は1.38と人不足はおさまる気配がありません。これで円安に傾きでもして、大手の業績が改善し始めたなら、さらに人不足は深刻になることでしょう。
 採用難で人が足らない中、長時間労働への規制は厳しくなり、最低賃金は毎年2%以上も上がって、さらに政府は雇用を流動化に向かわせています。雇用の流動化は中小企業にとっては、有能な人材の定着が難しくなることを意味します。
 つまり、現在の流れは、賃金のアップに加えて、時短を推進し、働きがいにつながる環境を整えざるを得ないという、タイトな選択肢を会社にせまるものです。大手企業では、7時間就業や残業ゼロを掲げる会社が出てきました。そうすると、そのしわ寄せはたいてい中小にまわってきて、さらに振りまわされることになりかねません。中小企業への逆風は高まるばかりです。
 この状況を乗り切るには、生産性のアップ、付加価値のアップしかないのですが、それが簡単にできるなら、とっくの昔にやっているということでしょう。しかし、人不足、時短、時給アップ、有休取得促進に休日の増加、この厳しい条件にこたえる手立てはやはりそれしかないと思われます。
 また、人不足と長時間労働への対処に雇用の多様化は避けられないに違いありません。雇用の多様化とは、パート、総合職正社員、時短正社員、地域限定正社員、職務限定正社員、高齢者雇用、外国人雇用、派遣社員などが混在することをいいます。このような人たちを活用し、生産性を高めるには、マネジメントできる人材が欠かせません。しかし、それは中小企業にとってはもっとも苦手な分野です。
 中小企業は大手と同じマネジメントを求めがちですが、中小に必要なのは高度なマネジメントではなく、底上げと思います。中小の人材教育はマネジメントの底上げに注力すべきです。

ご贔屓筋、桂雀三郎さんの独演会が今年も23日にサンケイホールプリーゼであります。今年のとりの演2016目は大ネタ「百年目」です。落語通の社長さんからの情報では、東は圓生、西は米朝さんが得意とした噺で、大旦那に番頭や手代に丁稚など登場人物が多く、使い分けが非常に難しいということです。そういえば、先週に雀三郎さんにお会いしたら、いつになく気合が入っていたような。林修先生に今一番の名人といわしめた雀三郎さん、さて難題「百年目」をどのように料理されるのか、今から愉しみです。

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2016年10月22日 (土)

二百八十六話 ハイブリッド型退職金

 年内にも新しい企業年金が発表されそうです(政府のリードで今回はいつになく対応が早い)。新しい企業年金は、確定給付型と確定拠出型(日本版401K)の中間に位置する仕組みです。確定給付は会社が将来の積立不足リスクを負い、確定拠出は社員が負いますが、新制度は将来リスクを会社と社員で分担しようというもので、いわばハイブリッド型というわけです。
 リスク分担というのは、積立不足や過剰に対して、あらかじめ労使でその処理方法を決めておくものです。会社が払う通常の掛金は定額ですが、リスク対応掛金を別途設ける会社負担分と、財政状況に応じてあらかじめ決められた算定方法で受け取る給付額を変動させる社員負担分とでリスク分担することになります。
 確かに、確定給付と確定拠出の双方のデメリットを補っており、確定給付の増大する掛け金の積み増しは緩和されますし、確定拠出の社員へリスクの押しつけ感や投資教育の必要性はありません。その点では理想的と言えそうですが、但し、制度が複雑で労使で決めるのに難があるのと財政検証が複雑で銀行や保険会社などの幹事会社への管理手数料がかなり掛ると思われる点で導入は一部の企業に限られるでしょう。ましてや、このままでは中小企業への導入は難しいと思われます。簡易版でも出ない限り、当面は検討の対象外でしょうか。

わたしどもの会でも講演を頂いた、平尾誠二さんが20日に逝去されました。初めてお会いしたときの印象はいまだに強烈に脳裏に焼き付いています。絵に描いたような美男子で、想像以上に身体が兎に角大きく、まさにPhoto_2圧倒されるオーラが立っていました。平尾さんは著書も多く出されていて、その組織論は大いに参考となりました。ラグビーの15人のチームにもその社会における人の関係のあり方が投影されているという一文からは大いにマネジメントへの示唆をもらいました。それにしても、53歳というのは早過ぎます。日本はラグビーがこれから盛り上がるというときに惜しい人材を失くしました。ご冥福を祈るばかりです。

自著「人を使うのが上手な人のリーダーのワザ」の台湾語版が台湾の出版社から発売となりました。訳者は、ユニクPhotoロの柳井社長の本なども翻訳している方とかで、光栄ですね。中国語はさっぱりですが、漢字をみているだけでも面白い。たとえば、「計画是従最後完成的状態開始回推建立」は「計画は最後から立てる」、「了解団隊的戦力」は「チームの戦力を知る」みたいですね。ちょっとは台湾でもヒットしてくれれば嬉しいですが。

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2016年10月17日 (月)

二百八十五話 リーダークラスの研修Ⅰ

 わたしどもでは班長、リーダー、主任、係長など、リーダークラスの研修にも力を入れています。もちろん管理職の研修も大事なのですが、効果を考えると会社によっては、リーダークラスを育成した方が効率が良いと思われる場合が多いからです。
 多くの中小企業では、リーダークラスの教育の目的の一つは管理職候補の養成といえます。そのために「ひとを使える人」の底上げをしようというものです。また、このクラスの底上げが管理職の意識を高めることにもつながります。
 中小企業では「実務のできる人」が、リーダークラスや管理職に上がっていかざるを得ません。実際は「ひとを使える人」にそれほど向いていなくともです。「向いていない人にさせるべきでない」というのは、その通りで正論なのですが、それをいっては中小企業では役職をする人がほとんどいなくなってしまいます。
 したがって、「ひとを使うのにあまり向いていない人」でも、最低限の基本スキルを身につけて、それらしくなって貰うことを研修の最初のターゲットとしています。また、自分は向いていないと思っている人でも、ポイントがわかると、「リーダー職もまんざらでもない」と伸びていくケースが結構あったりします。誰しも、覚えたことは実践してみたいものなので、向上心に繋がっていきます。
 中小企業のリーダークラス研修の要諦は、難しいマネジメントの学習はまたいずれということにし、まずはやればできる基本をきっちり身につけてもらうことといえます。

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2016年10月 9日 (日)

二百八十四話 研修サポート①

 10月は人事考課と目標設定が重なり、忙しいところが多くなります。それに伴い、わたしどもにも考課者訓練や面接の立会い、目標設定研修などの予定が入ります。会社としては、自社内で訓練や研修が完結するのがのぞましいのですが、なかなかそうはいきません。できない理由が中小企業には大きく3つくらいあります。
 一つは、まず研修の時間が取れません。集合型研修は一度に介さねばならず、管理監督者が広く深く実務に携わるために調整がつかないのが実際です。内部ではなかなか調整がつかないために、わたしどものような外部の手を借りて、イベントにしてしまわないと進まないわけです。
 二つには、多くの中小企業では内部でレクチャーやファシリテートできる人材がいないのです。実務の指導者は育成できても、人事にまでは手がまわりません。でも、考課や目標設定の疑問点など日常の細かなフォローをするには、やはり内部で人材が育つのが理想です。外部コンサルなどはそのバックアップに使いたいものです。
 三つには、そもそも人事の問題というのは会社内でできないことも多いからです。とくに中小企業では距離が近すぎてやりにくいのです。たとえば、「あの人には評価されたくない」という問題は、人事考課の問題ではなく、マネジメント上の信頼関係の問題なのですが、一緒に扱わざるを得なくなるのです。絡み合った糸を内側にいて解くのは難しく、外からのサポートが必要になるわけです。いわば、外部コンサルを使う一番の値打ちかもしれません。
 これから人材の確保と定着が難しくなる中で人材を活用していくためには、人事考課と目標管理は増々重要になるでしょう。継続し、PDCAをまわしてレベルアップしていくには、研修もセットで続けることが望まれます。

見たい映画が少ないなかで、先日、兄の薦めで見た「THE BEST OFFER]というイタリア映画は秀逸でした。脚本がみごとで、役者が上手く、ディティールが完璧という上に欧州映画ならではの重Photo厚な雰囲気は好みはありますがお薦めです。ただし、残念なのはその邦題で、「鑑定士・顔のない依頼人」というのはお粗末過ぎるというか、視聴者を甘く見過ぎています。このタイトルでは到底見る気がしません。看板は大事です。

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2016年10月 2日 (日)

二百八十三話 働き方改革~その④

 政府が進めようとしている「多様な働き方」とは、これまでのように非正規が増えることではなく、「多様な正社員」が増えることです。つまり、具体的には地域限定正社員や職務限定正社員、短時間正社員などであり、これらはすでに身近でも実際に目にするようになってきています。また、ここでいう正社員とは、「期間の定めのない雇用」であり、同じような仕事に就いていれば、総合職正社員等と時間当たりの賃金は合理的な説明ができる範囲の格差しかない雇用形態をいいます。
 このような流れに動いていくことは間違いないでしょう。このことは中小企業の人事政策に大きな変化をもたらすと思われます。まずは、賃金の底上げが当面続きます。労働集約型の産業は増々厳しくなりそです。けれども、それが変化のメインではありません。おそらく、多くの企業は賃上げばかりに目が行き、その他の変化に気がつきにくいでしょうが。
 その他の変化の一つは、「会社に就く」意識よりも「仕事に就く」意識が急速に高まることです。このことは、雇用がより職務契約型に向かうことを意味します。おそらく、契約社員という言葉は死語になるでしょう。雇用は契約という意識がふつうになるからです。
 但し、中小企業にとって重宝なのはやはり総合職正社員です。つまり、会社は総合職正社員を軸に「多様な正社員」が混在することになります。しかも、「多様な正社員」もこれまでのような安価な労働力ではなくなりますから、効率良く働いてもらわないとなりません。したがって、マネジメントの必要性が増すことでしょう。でも、中小企業にとっては苦手な分野です。
 また、職務契約型に向かうことで雇用はより流動化するでしょうから、人材の確保と定着に今以上に振りまわされることになるでしょう。こちらは喫緊の問題です。その意味でも、マネジメントができる人材の育成は各社の必須課題となります。苦手な分野だけに、マネジメントできる人材の養成に成功するかどうかが競争力の差となりそうです。

台湾の出版社からオファーのあった、拙著新刊「人を使うのが上手な人のリーダーのワザ」がいよいよ出版されるようです。表紙のデザインが送られてきました。タイトルが「領導慣性」となっています。リーダーの習慣みたいな意味でしょうか。゙中国語はさっぱりですが、オリジナルの雰囲気とは違って、少々派手ですが面白そうです。売れるといいのですが。

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