三百三十四話 西の風②
日本に浸透した職能給は能力を値決めするような賃金であり、能力は人が保有するわけですから、人にくっついた賃金です。能力が上がれば、賃金も上がりますが、仕事に賃金が直接くっついてないので、担当の仕事が変わっても能力が同じなら賃金を変える必要は薄いといえます。お蔭で会社は人材をフレキシブルに使えます。ローテーション、異動など何ら問題ありません。結果、会社の中で人材を長期に育成することが可能となり、就く仕事がかわっても賃金を安定させることができ、会社へのロイヤリティも高める効果をもたらしました。
この職能給の長所は、「総合職」という他に類を見ない日本独自の発明品によって保障されています。「なんでもする」「どこへでも行く」「長時間労働も厭わない」という、会社にとっては非常に都合の良い「総合職」の特徴が職能給を生んだともいえます。そして、社員は「総合職」とバーターで「終身雇用」「年功型賃金」を手に入れました。また、定期採用、定期昇給、高い比率の賞与などがセットの社会制度として、さらに強固なものとなりました。
職能給を手放し、世界標準の職務給に切り換えることは、いわば、われわれが常識として思っている日本の雇用・賃金制度そのものを変えてしまうことに他なりません。そして、これら日本の特徴的な制度の恩恵をもっとも享受しているのが、中小企業といえます。なかでも中小製造業の繁栄はこれらの制度なくしては考えにくいと言えるでしょう。われわれはこのことをよく理解しておくべきと思います。(西の風③へつづく)
写真は神戸開港150年記念コンサートのリーフレットです。美人のソプラノ飯田嘉寿子さんが日頃お世話になっております明日香出版社の石野相談役の同窓生ということで紹介いただいたものです。ご興味のある方はぜひどうぞ。
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