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2019年8月

2019年8月26日 (月)

四百二十六話 派遣の同一労働同一賃金のインパクト

 20年4月より同一労働同一賃金の本格法制がスタートします。これは非正規社員を対象とした処遇の規制ですが、派遣社員も対象となり、かなり制約を受けることになりそうです。派遣社員を雇うには、その賃金を「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」かのどちらかで決めないとならなくなります。中小企業の多くはおそらく、自社の社員と同等の処遇にする、「派遣先均等・均衡方式」を選ぶと思われます。
 この規制自体は想定していたことでしたが、注目すべきは、もう一つの「労使協定方式」で、先ごろ発表されたその具体的内容によるところです。「労使協定方式」というのは、「同じ地域で働く、同種の職種の仕事に従事する正規労働者の平均的な賃金以上にせよ」というものですが、その具体的な賃金指標が7月8日に通達として発表されました。基礎となる指標は大きく二つあり、一つは「賃金構造基本統計調査」、もう一つが「職業安定業務統計」です。どちらも細かな職種別の賃金指標で、とくに「職業安定業務統計」には全国ハローワーク別の賃金水準の基づく、789職種別勤続年数別賃金と全国平均を100とした都道府県より細かな職安管轄別の地域指数が公表されています。
 これは日本で初めての一般職種別賃金の法制化であり、誰も想定していなかったに違いありません。厚労省は思わぬ隠し玉を出してきました。「労使協定方式」は民間の指標を使ってもよく、これからの運用次第では民間の機関による指標がどっと出てくる可能性があります。日本の賃金の職務給化は意外に早く進むかもしれません。

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2019年8月21日 (水)

四百二十五話 新入社員の有給休暇

 それほど上位ではないものの、残業時間数や年間の労働日数も新卒応募者のその会社を選ぶ要件に上がっていますが、年休も同様です。労務行政研究所による上場及び匹敵企業対象の調査では、年休のかなりの前倒し付与が見られます。
 法定では入社6ヶ月経過後に10日(継続勤務及び出勤率8割以上)ですが、まず、6ヶ月経過時点までに「一括して10日以上付与」が83.1%あり、そのうち「入社時点での付与」が半数以上の55.8%もあります。しかも、付与日数は平均で11.5日と10日以上の会社が結構あるのです。また、6ヶ月未満での付与も78.0%となっています。入社6ヶ月経過後に10日ですら「いつ働いているのか」という中小企業の常識からすると、とんでもないことに見えますが、会社が選ばれる時点で差をつけられている点の一つと思われます。「働いてもいないのに年休を期待する社員などいらん!」と言いたいところですが、応募者からすれば、年休は実際に使わなくとも、「処遇」「福利厚生」の氷山の一角で「社員を大事にする会社」の印象を持つようです。
 少人数の会社が人材を確保するにはそろそろ発想を変えないとならなくなってきました。

 

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2019年8月 5日 (月)

四百二十四話 新入社員調査その②

 産能大の新入社員アンケート調査で気になる二つ目は、「1ヶ月に許容できる残業時間」の回答です。残業の多い会社にとっては、残業に対して新入社員がどの程度の感覚で入社したかの傾向が参考になります。
 まず、男性と女性とで、少なからず差があります。よって、男女別に見ておくべきでしょう。「残業0」は男性1.1%女性2.7%ですから、「残業がない」と考えて入社した人はほとんどないといえます。次に「1~10時間」で男性13.7%女性27.0%と差があります。全体に男性の方が残業時間の許容範囲はやや高めといえます。「11~20時間」では男性26.6%女性29.1%、「21~30時間」で男性28.8%女性23.6%となり、男女とも30時間までで約7割以上を占めます。「31~40時間」では男性15.1%女性13.5%と30時間超からぐっと比率が下がって、「41~50時間」では男性6.7%女性2.0%となります。
 このデータからすると、新人の残業は30時間くらいまでに抑えておいた方が、リアリティショック(入社前と入社後の落差)が小さいと言え、早期離職の回避に繋がると思われます。

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