四百五十七話 中小企業の人事のコツ④
コロナ禍の影響もあって、今年はジョブ型雇用の本格導入がわが国の人事の大きなテーマになるといわれています。すでに導入、または導入を決定した大手は増えていますし、経団連も推奨しています。
ジョブ型雇用は雇用形態の一つですが、これまでに何度か我が国に訪れた人事のトレンド(能力主義や成果主義など)と違い、大半の中小企業にとっては「どう取り入れるか」が問題となるものではありません。ジョブ型雇用は「何でもする」「どこへでも行く」「残業も厭わない」という総合職雇用の対極で、簡単にいうと、「それはわたしの仕事ではありません」といえる雇用形態です。したがって、限られた人材でめまぐるしく変容する市場を生き残らんとする中小企業にとって、軸となる人事施策としては、はなから選択肢には成り得ないでしょう。それでも、中小企業にとってジョブ型雇用は非常に大きな影響をもたらすはずです。
現在の日本は能力主義社会です。職能給、職能等級制度、総合職、定期採用、定期昇給、終身雇用、企業内組合などがその構成アイテムで、日本の人事の特徴で日本独自といえるものです。大半の中小企業はこの能力主義社会から多大な恩恵を受けているといえます。よって、仮に日本以外の他の国と同様にジョブ型雇用社会に移ったとして、そのなかで中小企業が存続するためには「どう取り入れるか」というより「どう取り入れずに済ますか」がメインテーマになるということです。つまり、大半の中小企業にとって、日本が社会的な認識として変容する、ジョブ型雇用社会となるかどうかが、これからの最大の問題となるでしょう。動向を注視する必要があります。
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