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2023年4月 8日 (土)

四百九十一話 中小企業の賃上げ

 当初の予想以上に賃上げは高まりつつあります。年末の統計機関の予想では高いところでも2.8%程度でしたが、各社上方修正していて、3%台に乗り、半ばまでいきそうです。連合は4/3の賃上げ回答の集計で3.7%としています。この大手の勢いが中小企業にどこまで拡がるかがポイントですが、例年の大阪シティ信金の大阪府下20人未満の企業が約8割を占める調査では、賃上げをする企業が45.4%、昨年比19.1ポイントの増加で1998年以来の大幅な伸びとなっています。賃上げする企業の平均賃上げ率も3.22%と0.28ポイント上昇し2年連続の3%超えです。
 今年の特徴は時間の経過とともに上がっていることですが、関与先でも一度決めた昇給を再度もう一段アップさせる例が多くなっています。方法としては、定昇だけでなくベアを乗せて例年以上に上げる、あるいは物価手当などの一時金を支給するなどです。
 いずれにせよ、問題は大幅アップの理由です。大きくは四つあります。前面に出ているのは「物価上昇」ですが、その世間のムードに社員が期待し、それに応えるというのが一つです。二つ目は人不足、つまり採用難、離職リスクへの対応です。上げないと転職するかもしれず、その穴埋めの採用もままならないことへの危惧は大きいといえます。「物価上昇」はいつまでも続かなくとも、人不足の解消はおさまらないという危惧は一時金ではなく、ベアへの動機となっています。三つ目は新卒初任給の上昇です。ここだけは大手と直接向き合っています。大手銀行が一律5万円アップ、商社が30万円ですから、揃えるのは無理としても、全体の底上げにある程度はついていかざるを得ず、影響は多大です。大幅な初任給アップに既存社員だけ据え置きとはいきません。影響を緩和するも上げていかざるを得ず、これもまたベアの二つ目の動機となっています。四つ目は最低賃金アップです。これはダイレクトに非正規の賃上げをもたらします。現在の全国平均が961円で岸田首相は1000円に意欲を見せていますから、39円、4%アップという過去最大の大波が来る可能性はかなり大きいといえ、例年の7月の発表を待たずに多くの企業がすでに対応をはじめています。
 中小企業もこのように強力な理由が四つも揃うと、今年は放置しておけるところはないでしょう。でも、行き当たりばったりの対処では、やがて行き詰まるのが賃金です。慌てず、説明のつく体系的な対処がのぞまれます。

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